2012年07月30日  テレビ

その者!

俺が東京電力の広報担当者を演じた新作ドラマ、
「The Newsroom」が放映された。



内容は・・・、「東京電力」という実在の会社名を使い、
フィクションのストーリーで原発事故を扱っているので、
日本での放映は、まあ絶望的と見ていいだろう。


肝心の演技の方は、全世界に向けてテレビでウソを吐く姿に
怒りと同情とを覚える、中々面白い仕上がりになっていた。

このストーリーを最後まで観て、
その上でこの役を「悪役」と呼べる人は、まずいないハズだ。

・・・これでストーリーが原発関連じゃなければ、
本当に良かったんだけどなぁ。


よーし、次の役を探そう!!

投稿者 ユウキ : 23:57 | コメント (1)

2012年07月23日  テレビ

につきましては、

今年の2月に出演した、「とある新作ドラマ」が、
いよいよ来週放映される。

このドラマで、俺が演じたのは・・・、



・・・そう。その「まさか」だ。


どうして出演をあれほど躊躇したのか。
そして、どうして報酬を全額、福島へ送ったのか。

これでお分かり頂けたハズだ。


・・・さあ、いよいよだ。

狙い通り、ちゃんと一人の人間になっているのか。
来週の放映を待とう。

投稿者 ユウキ : 07:43 | コメント (4)

2012年03月06日  テレビ

青き衣

先日出演した「とある新作テレビシリーズ」から
出演料が送られてきたので、宣言どおり、
税金とマネージャーに支払う「マネージング費」を除いた
俺の手取り全額を、「福島県災害対策本部」に送金した。



これで、とりあえずのケジメはついた。


・・・なぜ、ここまでしなきゃいけなかったのか。
それは実際の出演シーンを観れば、分かって貰えるハズだ。

さあ、次の仕事を探そう。

投稿者 ユウキ : 18:56 | コメント (2)

2012年02月15日  テレビ

焼けた炭の上

「とある新作テレビドラマ」の集合時間が午前6時と早いので、
俺は午前3時に起きて、撮影の準備を始めた。

・・・睡眠時間は約2時間半。

短いように思うかもしれないけど、
今回俺が演じる役としては、最適な長さだ。


スタジオ入りしたのは、集合時間の15分前。

スタッフに導かれるまま、メイク&ヘアメイクを済ませ、
脚本家の方の前で、一度シーンを通し、
セリフの最終チェックを行った。


・・・よし、いよいよだ。

控え室を出て、セットに向かって歩き出すと、
身体の底から震えが湧き上がって来るのを感じた。

寒さのせいだろうか、それとも・・・?


今回のシーンの撮影は、スタジオ内に作られた2つのセットを
モニターで繋いで「インタビュー形式」で撮影する、という、
これまでに経験した事の無い方式がとられた。

俺自身は、伏し目がちで、手元の紙を見ながらインタビューに答える、
かなりドライなシーンを想像していたんだけど、
カメラ目線で、という指示があったので、それに従った。


 そして・・・、とうとう撮影が始まった。


もう前に何度も書いたように、今回俺が演じる役は、
どのように演じても批判を受ける役だ。

こればかりは、役の設定上、どう頑張っても避ける事ができない。

・・・でも、俺がもしこの役を「感情を持った一人の人間」に
する事ができれば、番組の視聴者に「日本人=この役」ではなく、
「日本人=感情を持った人間」と思わせる事ができる。

そうすれば・・・、これから先に生まれて来る
「日本人役」のイメージが、より「人間」に近づく。

そのためにこそ、俺はこの役を演じるんだ。


 全力で日本人役を取りに行き、現場に入り込み、
 日本人のイメージを改善するため、可能な限りの事する。


これが、俺達日本人俳優の使命だ。


今回は、「統率者」の方と、「日本人コーディネーター」の方の
協力があったので、環境としては、今までで一番恵まれていたと思う。

これで「題材」が違っていれば、最高だったんだけど・・・。


・・・とにかく俺は、自分にできる限りの事をした。

あとは、叩かれるのを耐えよう。

投稿者 ユウキ : 23:03 | コメント (5)

2012年02月14日  テレビ

しつじかい

今日は朝から、子供向けコメディドラマの
オーディションがあった。

昨日の夕方に貰った台本を分析し、
セリフを覚え、衣装を着て参加した。


結果は・・・45点。


キャスティングディレクターの指示に従っての
「キャラクターの調整」は上手くできたんだけど、
その過程で肝心のコメディ要素が少なくなってしまった。

・・・うーむ、コメディは難しいなあ。


その後、今度は「とあるテレビスタジオ」へと移動し、
1時間ほど、明日撮影のシーンの自主リハーサルを行った。

かなり混沌としたシーンだったんだけど、
セリフを通した事で、シーンの流れがハッキリ見えるようになった。


・・・よし。いよいよ明日だ。

投稿者 ユウキ : 23:37

2012年02月08日  テレビ

てんぷら粉

「とあるテレビドラマ」の撮影は、
ハリウッドの中心地に位置する、とあるテレビスタジオで行われた。


スタジオ入りして、「衣装合わせ」を済ませると、
すぐに日本人のコーディネーターの方と、
日本語のセリフの打ち合わせに入った。

二人でタッグを組み、日本語のセリフを可能な限り調整し、
日本人が見ても納得できるよう、修正に修正を加えていく。


・・・もちろん、できる事に限りはある。


例えば、今回の俺の役は「一連の事故の対応」を
一つにまとめたような役柄なので、
時系列的に、事実と違う部分があったりする。

日本人としては、この題材は全て、
事実に乗っ取ってやって欲しいけど、
この部分を変えてしまうと、ストーリー自体が変わってしまう。

・・・後のシーンはもう既に撮影済みなので、
残念ながら、こういった部分はもう修正できない。


仕方が無い。でも大丈夫!まだできる事は山ほどある!


幸い、今回はすこぶる条件がいい。

なんてったって、「統率者」の方がこちらの味方なんだ。

彼が日本語のセリフの調整を全力でサポートしてくれるし、
日本人のコーディネーターの方もいるので、非常に心強い。


・・・よし。今日の撮影では、できる事は全てやった。
残りの撮影も、全身全霊を込めて取り組もう。

投稿者 ユウキ : 23:56 | コメント (5)

2012年02月07日  オーディション★2

13階段を上れ

例の「新作テレビドラマ」キャスティングより、
今度こそ、正式な出演オファーが来た。


とうとう来たか。

・・・ここからが本当の勝負だ。


理由は前に書いたけど、
この役は批判を受ける事を、絶対に避けられない役なのだ。


・・・そりゃあ俺だって、できれは逃げたい。批判されたくない。

でも、日本人俳優の誰かが、責任を持ってこの役を演じなければ、
もっと大変な事になってしまう。この役は、それほど重大な役なんだ。


・・・今の俺にできる事は、この役に全力で臨み、
ハリウッドにおける「日本人のイメージ」を保てるよう、
可能な限り努力し、そしてこの役を演じた贖罪として、
その報酬を全て福島に送る、それだけだ。


・・・さっそく明日は撮影だ。準備に取り掛かろう。

投稿者 ユウキ : 23:41 | コメント (3)

2012年02月06日  オーディション★2

トロイの木馬

「とある新作テレビドラマ」の二次選考は、
ハリウッドに位置する、テレビスタジオで行われた。

つま先から頭のてっぺんまで、衣装は完璧だ。

・・・あとは演技か。


オーディション室内には、キャスティングディレクターと、
「統率者」の方と、「指揮者」の方の、3名が座っていた。


俺が室内に入って挨拶をすると、
「統率者」の方が、手をこちらに差し出しながら言った。


  「あ、どうも宜しくお願いします。(日本語)」


・・・うおおっ!!びっくりしたっ!!


なんと「統率者」の方が、まっっったく訛りの無い
完璧な日本語で挨拶してきたのだ!!

・・・な、なるほど。オーディションの備考欄に、

 「日本語を完璧に喋れる関係者がいるので、
  喋れるとウソついてもバレます。」

と書かれてあったのは、この事だったんだ!


 肝心のオーディションの結果は・・・、 75点


これまで受けた、全てのオーディションの中で、
最高の出来だった。


・・・うん。やるだけやった。悔いは無い。

よーし落ちた!次に行こう!!

投稿者 ユウキ : 23:08 | コメント (1)

2012年02月03日  オーディション★2

ゴムパッチン

先日オーディションに参加した「とあるテレビドラマ」より、
俺をキャストしたいとの連絡があった。


・・・よしっ。取った!!!

さあ、台本をもう一度読んで、
内容的に修正して貰わないといけない部分を
リストアップして、提出しなきゃ。


 ・・・ん?


またマネージャーの「マイク」から電話だ。
一体なんだろう・・・?


マイク「・・・ユウキ!信じられない話だけど、
    月曜日にもう一度、プロデューサーの前で、
    オーディション用の台本を読んで欲しいそうだ。」

ユウキ「・・・ええっ!?
    俺、もうキャストされたんじゃなかったの?」

マイク「そうなんだよ!キャスティングも、さっきまでは、

    『月曜日に報酬の交渉をしましょう』

    って言ってたんだけど、急に

    『追加の台本を送りますので、
     月曜日にまた来て下さい』

    になってしまったんだ!」


・・・こ、こんな事もあるのか。

おそらく、俺が役的に若すぎる事が、
原因ではないかと思う。


・・・まあいい。俺はまた、ベストを尽くすだけの話だ!

さあ、頑張ろう!!

投稿者 ユウキ : 23:57 | コメント (1)

2012年01月31日  オーディション★2

開くの十時か

明日、とある「新作テレビドラマ」のオーディションに参加する予定だ。


俺が最後にオーディションに呼ばれたのは、
・・・なんと、2011年7月14日。


約半年振りのオーディション、
さぞ心が躍っているに違いない、・・・と思うでしょう?


 でも実際は、その真逆だ。


俺はこれまでで一番、気持ちが沈んでいる。


  なぜか。


それは、明日演じる役が、モロに「原発事故」絡みだからだ。


・・・やはり来たか。


これまでに俺自身が何度も経験したように、
ハリウッドにおける「日本のイメージ」は、
月日と共に、何度も変わってきた。

テレビドラマ「HEROES」が放映されて、
日本人のイメージが明るくなったのも、その一つだ。


・・・そして3/11の震災以後、
日本に「新たなイメージ」が加わった。


 「日本、大震災、原発事故」


うんがー!!


日本人としては、「大震災」は仕方が無いとしても、
「日本=原発事故」というイメージは、どうしても持って欲しくない!

・・・だってそのイメージは、日本にとってマイナスじゃないか!


 「日本=原発事故=放射能汚染=危険」


俺は、日本がこんな風に思われるのは嫌だ!!


・・・でも、現実問題として、原発事故は実際に起きてしまい、
「日本の重大な歴史」の一部になっているのも、事実なのだ。


数ヶ月前の話だけど、俺は友人のプロデューサーから、
日本が舞台の「とあるテレビドラマの台本」を読んで、
正直な感想をくれないか、と頼まれた。

・・・そこにはなんと、こんなセリフが並んでいた。


 「日本に行くですって!?危ないじゃない!
  お願いだから東京には行かないで!」

 「大丈夫、大阪だから。
  原発から離れているから大丈夫。」


これを読んでアッタマに来た俺は、そのプロデューサーに、

 1、東京には現在も、1300万人が住んでいる事。
 2、東京と福島第一原発は離れている事。

を説明し、日本人には到底受け入れられない内容だと訴えた。


すると、そのプロデューサーより、このような反論があった。


 「・・・そうかもしれない。
  でも、一般人が思っている事をセリフにしただけなので、
  事実と多少違っていても問題ない。」


うおおおおおおお!!勘弁してくれ!!
俺は、日本がそんな風に思われるのは嫌だ!!


 ・・・はぁ。


・・・・非常に残念な事に、この原発事故と日本を絡める
「最悪な流れ」は、しばらく続くと予想される。


  そこで、俺たち日本人俳優は、どうすべきか。


「日本=原発事故」というイメージに加担しないよう、
原発に関わる、全ての役を断るべきか・・・?


・・・いや、それはマズイ。


俺達がそんな事をしたら、「エセ日本語」を話す
「エセ日本人」がテレビに登場して、
日本と日本人のイメージが、更に捻じ曲がってしまう。


・・・俺達は、たとえ「原発関連」であったとしても、
全力で役を取りにいき、その日本人役のイメージが
実際の日本人に近づくよう、死ぬ気で頑張るべきなんだ。

日本人が観ても許容できる内容になるよう、
自分にできる範囲で、現場で最大限努力すべきなんだ。


・・・逃げてはダメだ。


俺は・・・、全力で役を取りに行き、報酬を全て、福島に送ろう。


・・・よし。頑張ろう。

投稿者 ユウキ : 23:14 | コメント (12)

2011年07月13日  テレビ

ケルベロス

今年の1月に出演したコメディテレビドラマ、
Melissa and Joey」の第15話、
「Lost in Translation」がテレビ放映された。

今回俺が演じたのは、主人公の「メリッサ」と恋に落ちる、
「トシ」という日本人ビジネスマンの役だ。

英語が全く話せないばかりに、もう一人の主人公である「ジョー」に、
「メリッサ」との恋路を邪魔されてしまうのだ。

・・・まあ、俺のキャラクターが変態だから、
というのも一因なんだけれど・・・。



 ワーオ、ストレートヘアー、きんもー


・・・ほっ。とりあえず、カットされてない。


やったぞ!!ゲスト主役級だ!!!!!!


もっちろん、反省すべき点はたっっくさんある。
この反省を、次に生かさなければ。

さあ、次の役を取りに行こう!!

投稿者 ユウキ : 23:54 | コメント (3)

2011年07月06日  テレビ

ゲイリー

今年の1月に撮影したコメディドラマ
「Melissa and Joey」が来週放送される。



・・・ほっ。どうやら今度こそカットされてないようだ。

髪の毛をストレートにされたり、
セリフをほぼ直訳に近い日本語で喋らなきゃいけなかったりと、
大変な部分はあったものの、
超ベテランの主役陣と共演できた事は、本当に勉強になった。


・・・果たしてどんな編集がなされているのか、
ドキドキしながら待つとしよう。

投稿者 ユウキ : 23:39 | コメント (3)

2011年04月25日  テレビ

連鎖反応

先日キャストされた「とあるテレビドラマ」より連絡があった。


 「あなたが演ずる事になっていた
  日本人科学者の役が、消滅しました。」


・・・はい。

「書類上の問題」が発生した時点で、
雲行きは怪しかったけど、役自体が消滅するとは・・・。


なんでも、「書類上の問題」発生後、
テレビ局が、台本を精査したそうだ。そして・・・

 「『書類上の問題』もあるし、この役を消そう。
  大体、今の日本の状況を考えると、
  この役のこのシーンは、ちょっと時期尚早だし。」

という流れになったそうだ。

うーむ、まさか「自粛」が海を越えて来るとは・・・。


それにしても、俺はこの「俳優専用の、働くための書類」が憎い。

今回は、この「書類上の問題」が無ければ、
おそらく出演できていたハズだ。

もう無くなったものは、嘆いても仕方が無いので、
今後、二度と「書類上の問題」が発生しないよう、
「半永久的に働ける書類」を手に入れる手続きを始めよう。

よーし、気を取り直して、次へ行こう!

投稿者 ユウキ : 23:14

2011年04月18日  テレビ

ぬりかべ

先日キャストされた「とあるテレビドラマ」だけど、
「書類上の問題」で、出演できない可能性が出てきた。


 ・・・またか。


というのも、「書類上の問題」が発生するのは、
今回が初めてではない。

実は、これまで出演してきたほぼ全ての大作映画で、
キャストされた後に、一度は「書類上の問題」が発生してきたのだ。


・・・なぜか。

それは、俺が「外国人」だからだ。


外国人である俺たちが働くには、
当然 「働くための書類」 が必要になって来るワケだけど、
その「俳優専用の、働くための書類」が、あまりにも使えないのだ。

・・・一応、法律上では問題無いハズなんだけど、
スタジオやテレビ局の法務部が「独自のルール」を
振りかざすもんだから、そのまま使えた試しが無い。


もー。

投稿者 ユウキ : 23:46

2011年04月13日  テレビ

円柱状の宝石

先日「科学者」の役でオーディションを受けた
「とある新作テレビドラマ」より連絡があり、
俺がキャストされたと伝えられた。


 よっしゃぁあああ!!!
 今年2つ目の役を取ったどー!


嬉しいな。嬉しいなったら嬉しいな。

予定では、5月の初めの方に撮影らしい。
よーし、気合入れて役作りしよう。

投稿者 ユウキ : 23:33

2011年01月21日  テレビ

奮闘キノコマン

「とあるコメディドラマ」の公開収録日がとうとうやってきた!


集合時間は午前11時半。

俺はまず、私服のままで収録スタジオへと入り、
「カメラの切り替え」のリハーサルを行った。


それが終わると、俺はメイク室へ。

 「さあ、今日も真っ直ぐにするわよ!」


ぎゃー


・・・昨日の収録後にシャワーで戻した天然パーマが、
またもストレートのおかっぱ頭に・・・。

だ、駄目だ。どうしても慣れない。


次は、メインキャストによる「事前収録」だった。

自分の事前収録は昨日のうちに終わっているので、
俺は少し離れたところから、収録の様子を観察する事にした。

・・・モニター越しに見るその映像は、
まるで・・・テレビ番組のようだ。


午後4時になった。

公開収録がスタートするまであと1時間。

収録スタジオにはもう観客が入っているので、
キャストはメイク室に集まって、最後の「セリフ通し」を行った。


そして・・・午後5時。 開演の時間だ。


収録スタジオからは、大音量のダンス音楽と、
割れんばかりの歓声が聞こえる。

・・・なんともはや、ただ事ではない盛り上がり方だ。
まるでパーティーだ。これが・・・「公開収録」か!


 「カメラのこちら側」は、8人。


 「カメラの向こう側」は・・・、



・・・たっくさん。


そして、いよいよ公開収録が始まった・・・!

それは・・・、未知の世界だった。


自分の出番は、比較的アトの方だったので、
俺は他のベテランキャストが観客の前でどう演技するのかを
客席の横から観察していたのだが・・・

・・・セリフが、毎テイクごとに変わるのだ!

テイクが終わる度に、4人の脚本家と
「指揮者」の方が、モニターの前で
頭を突っつき合わせて緊急会議を開く。


 「ここのセリフは、もうちょっとウケる
  ジョークに変えれないかしら。」
 「・・・じゃあ、こんなのはどうかな。」
 「ここのセリフも、こういう感じに変更しましょう。」

 「・・・いいね、次のテイクで試してみよう。」


そして、そのうちの一人が役者の所へやって来て、
その場で、セリフの変更を告げる。


 「君のここのセリフだけど、
  今は『~~~』って言ってるけど、
  次のテイクでは『~~~』って言ってくれ。
  ここのセリフも、次はこんな感じで言ってくれ。」


・・・じょ、冗談だろ。

これって、つまりはリハーサル無しの、「一発本番」じゃないか。
セリフを丸暗記して演ずるだけじゃ、絶対に対応できない。


果たして俺は、上手くやり過ごせるのか・・・


俺が気をもむうちにも収録は進み、
観客席のモニターでは、昨日収録したシーンが流れだした。


 ・・・おお!ウケてる!!
 ウケてる!観客が俺のシーンで笑ってる!!


少しずつ勇気が沸いて来た。


次はいよいよ俺のシーンだ。

 さあ、覚悟を決めよう。


・・・まずは、リハーサル通りに一度。


よし!ウケた!

・・・でも、本番はここからだ。


 「ユウキ、次はこんな感じでやってみてくれ。」


来た・・・!さあ、行くぞ。


 ・・・よっしゃぁ!ウケた!


ここまでは何とかクリアだ。

監督がまたも俺に歩み寄る。

・・・俺は、自分の耳を疑った。


 「・・・ユウキ、次のテイクなんだが、
  『~~~』と、完璧なアメリカ訛りの英語で言ってくれ。
  おそらく実際の放送には使わないと思うけど、
  今日の観客を、とびきり驚かせてみたいんだ。」


え・・・、えええーーーッ!!


「完璧なアメリカ訛り」だと!?
日本人の役なのに!!

どどどどどどど、どうしよう!
そんな準備はしてないぞ!


 ・・・落ち着け!大丈夫だ。できる!

これまで音読してきた事を思い出せ!

迷ってるヒマはないぞ。一発本番だ。
さあ、胸を張って、堂々とやろう。


・・・。


気になる観客の反応は・・・、


  大  爆  笑


床が震えるほどの笑い声がステージ内を満たした。


うおっしゃあぁぁあぁぁああああ!!!!


監督は大喜び!
俺も大喜び!


収録が終わったのは午後9時だった。

カーテンコールで観客の前に出ると、
大きな拍手が迎えてくれた。

観客の生の笑い声を浴びる事ができて、俺は幸せだ。
ああ、出演できて、本当に良かった。


髪型はキモチ悪いけど。

投稿者 ユウキ : 23:32

2011年01月20日  テレビ

まな板の上の蛇

今日はコメディドラマの「事前収録日」だ!


本来、コメディドラマは、実際に観客の前でライブで演じて
その生のリアクションを録音するものだ。

しかし、「公開収録」は明日1日だけなので、
その時間内で全てを収録するのは難しい。

そこで、明日撮り切れない分を、
今日のうちに収録してしまおうってワケだ。


集合時間は朝8時半。

まずは収録ステージへに集合し、
「立ち位置」を決めるため、一度さらっと台本を通した。


それが終わると、次はヘアメイクへ。


「・・・あなた、それ、天然パーマ?」


『指揮者』の方が、俺の天然の「グルグル髪」を
不思議そうに眺めながら聞いた。


「ええ、そうですが。」

「へえ、日本人でも天然パーマな人って、いるのね!」

「ええ、いますよ。」

「でも、今回はストレートよ。」


「・・・え?」


「だって、私を含めアメリカ人の視聴者は
 『日本人=直毛』 だと思っているの。

 あなた自身は天然パーマだけど、
 あなたのキャラクターは、画面に登場した瞬間から
 視聴者が『日本人だ!』と思わなきゃ成立しないから、
 演出の都合上、今回はストレートににさせて貰うわ。」


・・・い、イヤな予感。


それはまさか・・・、


       まさか・・・、


ぎぃゃぁあああああああああああああ



焼きゴテみたいなもんで、
髪の毛をストレートにされたぁあああああああ!!!


「さあ、次は眉毛よ。」


 ・・・え"


「眉毛をキレイに整えるわよ。
 テレビだから、清潔感を出さなきゃ。

 絶対に動かないでね。」


うんぎゃぁああああぁぁぁあああああ



俺の眉毛に触るなぁぁああああああ!!


・・・人体改造を終えて、ステージに戻ると、
日本人のコーディネーターの方から
指を指されて笑われた。うううう・・・


ああ、髪の毛がサラサラしてて気持ち悪い。


・・・ああ、気持ち悪い。キモちワルい!

似合わなイ!おレ、ストレート、似合わなイ!!!


・・・もう駄目だ。観念した。
大人しく、自分の演技だけに集中しよう。

俺はスーツに着替えると、収録現場へと向かった。


そして・・・、とうとう収録が始まった!


驚いた事に、ペースが昨日より遅い。
・・・もの凄く遅い。


俺のシーンは特にゆっっっくりだ。

というのも、俺が日本語のセリフを喋っている間は
「英語字幕」をつけるので、
その時間を確保しなきゃいけないのだ。


 ぐたいてき には、、 この ぶんしょう を、、 
 じゅうびょうかん かけて、、
 よむ くらい、、 ゆっくりの、、 ぺーす です。。


自分ではかなり大げさになってしまった気がしたけど、
このジャンルは、それぐらいが丁度いいらしい。


収録は恐ろしくスムーズ進み、
なんと昼休みの前に終わってしまった。


監督は大喜び
キャストも大喜び。

俺も大喜び。


夜、明日の公開収録用の台本が送られてきた。

さあ、明日も頑張ろう。

投稿者 ユウキ : 23:22

2011年01月19日  テレビ

控え室のドラマ

今日のリハーサルは、午前11時からだった。

まずは昨日の夜に届いた新しい台本を見ながら、
それぞれのシーンを2回ずつ通してみる。


・・・セリフが変わった事で、
シーンの流れも微妙に変わってきている。

ジョークのタイミングを逃さないように気をつけなければ。


1時間のお昼休みを挟んで、
午後1時から3時まで、更にリハーサル。

今日はこの後に「テレビ局のお偉いさん方」への
発表会が予定されているし、明日はもう「事前収録」なので、
実質的には、これが最後のリハーサルなんだ。



セットの正面に椅子が設置され、
辺りに緊張感が漂いはじめた。


・・・さあ、お待ちかねの発表会だ!


は、速いッ!セリフの流れが速いッ!!

どういうワケか、みんなリハーサルの2倍近いスピードだ。

なんでいきなりスピードアップしたんだ?
昨日の発表会ではこんなに速くなかったぞ。


・・・な、なんとか頑張った。

俺自身の出来は・・・、70点だ。


今日はラストのオチがきれいに決まり、
20秒くらい笑いが続いた。・・・ほっ。


午後8時、収録用の台本が届いた。

・・・いよいよ明日か。 よし、読もう。

投稿者 ユウキ : 23:24 | コメント (4)

2011年01月18日  テレビ

カゴの中のドラマ

とある「コメディドラマ」のリハーサルは朝10時からだった。

今日はいつもの立体駐車場が満車らしく、
一番遠い駐車場に車を停め、
10分ほどテレビ局の敷地内を歩いてスタジオへと向かった。


今日もまずは、台本の流れに沿ってシーンを通していく。
基本的には、昨日と同じ流れだ。

 ・・・でも、ここからが違った。

リハーサルが一通り終わると、
セットの正面に、いくつかの椅子が運ばれてきた。



 「これから、プロデューサーと脚本家への発表会を始めます。」


・・・来た!


思い出した。
このジャンルでは、収録まで毎日「発表会」があるんだった。

その発表会での演技の出来次第で、
その役者のセリフが増えたり減ったりするんだ。


・・・ギャラリーの数は約30人。

緊張で口の中が乾いているのを感じる。

こりゃ完全な舞台だ。
堂々と演じきらなければ。


 俺の出来は・・・60点。


ジョークはそれなりに決まっていたけど、
最後のオチが中途半端な決まり方だった。

ここは本来、もうちょっとウケるはずなのだ。

明日は「テレビ局のお偉いさん方」への発表会がある。
・・・明日こそは決めてみせる。


うちに帰ったら、もう新しい台本が届いていた。ぎょえー

投稿者 ユウキ : 23:20

2011年01月17日  テレビ

アンテナを張って

今日からいよいよ「とあるコメディドラマ」のリハーサルだ。

テレビ局の立体駐車場に車を停めて
まずは向かった先は『衣装部』だ。

大きな鏡のある部屋で、俺が持参したスーツ3着と、
衣装部が用意したスーツ3着を着比べてみる。

 「・・・次は、このシャツ、このネクタイ、
  このスーツでお願いできるかしら。

  うん、・・・これも悪くない組み合わせね。」

衣装部が用意したスーツやシャツからは、
目ン玉が飛び出そうな値札がぶら下がっている。



うぉおおおおお、これが人間が着る物の値段なのか!?


約30分間の衣装合わせが終わると、
スタジオ内のセットでリハーサルが始まった。

役者もスタッフも、それぞれ台本を手に持ち、
シーンを一つずつ通していく。

格好は、みんな普段着のままだ。


リハーサルは・・・実になごやかな雰囲気で進んだ。

ジョークが決まるたびに笑い声があふれ、
映画の撮影の時のような張り詰めた感じは全くない。

こういったシリーズ物は、年単位で撮影が行われるので、
スタッフはみんな撮影に慣れてるし、もう家族同然なのだろう。


家に帰り着くと、心地よい疲労感を感じた。

さあ、明日も頑張ろう!

投稿者 ユウキ : 23:44

2011年01月14日  テレビ

本番前の本番

今日は『とあるコメディ・テレビドラマ』の、
「顔合わせ」と、「台本の読み合わせ」があった。

朝10時にとあるテレビ局の一室に集合し、
キャストやスタッフの方々に挨拶を済ませると、
小道具係の方が俺に歩み寄って来た。

 「君の役の名刺を作らなきゃいけないんだが、
  この漢字であってるかな?」

差し出された紙を見ると、
ちゃんとした漢字で、俺の役名が記されていた。

 ・・・おおおおお、すげえ!
 ここまで準備できているのは、これまでで初めてだぞ。


・・・それもそのハズ。

なんと、今回のエピソードだけのために、プロダクションが
日本人の文化コーディネーターを雇っていたんだ。


   だから、日本語のセリフも、日本語の小道具も、

   なんとすべて、日本語で書かれてあるのだ・・・ッ!!!


 ・・・当たり前のように聞こえて、

   これって結構レアなんですぜ、ここでは。


とにかく、日本人のために、ここまでしてくれているのだ。
しっかりと仕事をこなして、恩に報いなければ。


・・・おっと、どうやらそろそろ「読み合わせ」が始まるようだ。
俺は自分の名前が書かれた席に腰を下ろした。

ギャラリーは、約30人。
殆どが撮影スタッフだ。

よーし。ギャラリーがいるんだから、
ちゃんと笑わせなきゃな。


読み合わせは、驚くほどスムーズに進んだ。
ジョークがビシビシ決まり、室内はドッと笑いにあふれた。

・・・こ、これは、気持ちいい!

そうだよ、これだよ。
やっぱコメディは、客の笑い声がなきゃ。

 良い仕事=ウケる

このシンプルで分かりやすい構造が、
映画にもあればなぁ。


読み合わせの後は、衣装合わせだった。

そして、ここでも例の「日本のファッション誌」が役に立った。

「へぇ、日本のスーツは、シャツをわざわざ袖口から見せるのね。知らなかったわ。
 ちょっと、この雑誌をお借りしててもいいかしら?
 あなたの髪を、ぜひとも長髪のままにしたいから、
 プロデューサーにこの雑誌をみせて、交渉してみたいの。
 長髪の方が、スーツがスタイリッシュに決まるから・・・」

もちろん快諾した。

俺だって、できれば髪の毛を短く切って欲しくない。

なぜって、「長髪のスタイリッシュな日本人ビジネスマン」は、
アメリカのテレビには、なかなか登場しない。
・・・つまりこれは、「新たな日本人像」を作り出す絶好のチャンスなのだ。


夜、新しいバージョンの台本が届いた。
よし。頑張ってセリフを覚えよう。

投稿者 ユウキ : 23:47 | コメント (5)

2011年01月12日  テレビ

白バージョン

一昨日オーディションに行った
「コメディテレビドラマ」のキャスティングから、
俺が「ゲスト主役級」としてキャストされた、との連絡があった。

撮影は来週1週間だそうだ。


・・・いやっほおおおおッ!!!

役取ったぞぉおお!!!


しかも、「編集でカットされない役」を取ったぞぉおおお!!!


・・・いや、さすがに今回こそは、カットされないと思う。
だって俺をカットしたら、ストーリーが成り立たない。


夜、届いた台本をめくると、
キャストの欄に、自分の名前があった。
・・・しかも、シリーズレギュラーのすぐ下だ。


おおおお、この位置なら・・・カットされ無さそうだ!


精一杯、死ぬ気で頑張りますんで、どうかカットしないで。お願い、ヤメテ。

投稿者 ユウキ : 23:05 | コメント (2)

2011年01月10日  テレビ

三者三様

マネージャーの「マイク」から電話が入った。

 「ユウキ、今年初のオーディションだ!
  テレビのファミリーコメディで、
  一話だけに登場する、『ゲスト主役級』の役だ。
  頑張ってくれ!」

おおおお、オーディションが入ったぞ!
2011年初のオーディションだ!

・・・しかも、「ゲスト主役級」だそうな。
という事はつまり・・・、「編集でカットされない」という事だ!


こ、これは何としても取りたい。
全力で頑張ろう。


よし、まずは衣装を揃えねば!

今回の役は日本人のビジネスマンなので、
日本のファッション誌を参考にするとしよう。

・・・ふふふ、実は前回日本に帰国した時、空港の書店で
 「自分が逆立ちしても、絶対に買いそうに無い雑誌」
をあえて購入しよう、と思い付き、
買っておいたファッション誌が何冊かあるのだ。



・・・なになに、
袖丈はシャツが1CM見える長さがジャスト・・・、
ジャケットの着丈はヒップがギリギリ隠れる程度・・・、か。

よし。これをお手本にして、
仕立て屋さんに俺のスーツを仕立てて貰おう。


掛かった料金は・・・$50。

ぐ・・・、仕方が無い。
全ては「ゲスト主役級」のためだ。


うむ、これで衣装は揃った。
あとは・・・、「ジョーク」を決めれるかどうかが勝負だ。


『フルハウス』を始めとする「ファミリーコメディ」というジャンルは、
だいたい4行に一回ぐらいの割合で、ジョークが入っている。

ここで一番重要なのは、
「よい演技」ではなくて、「笑える演技」をする事だ。
ウケなければ、どんな名演技も役に立たない。

あらかじめ、このシリーズを視聴して、予習しておこう。


オーディション会場に着くと、
エントリーシートに名前を記入し、
待合室で自分の名前が呼ばれるのを待った。


 結果は・・・55点


ジョークの成功率は、約4割。

しかも、思いきり日本語のセリフで噛んだ。
でも、間違えたことを表情に出さないで、何とか乗りきった。


オーディションを終えて、昼飯を食べていると、
マネージャーの「マイク」から電話が掛かってきた。


 「ユウキ、今朝のオーディションのコールバック(2次選考)だ!
  時間は今日の午後5時。場所はテレビ局。
  頑張ってくれ!」


うおっしゃぁああ!!
2次選考に呼ばれたぞ!

俺は気合を入れ直すと、車に乗り込んだ。


2次選考の会場は、とあるテレビ局の一室だった。
俺はカメラの前の椅子に腰を下ろすと、シーンを始めた。


 結果は・・・、65点。


ジョークの成功率は、約6割。
一応それなりにウケたので、ほっとした。


自分としてはベストを尽くしたので、悔いは無い。
・・・さあ落ちた!次へ行こう!

今年はオーディションが増えるといいなぁ。

投稿者 ユウキ : 23:05 | コメント (2)

2010年06月20日  テレビ

透明人間

去年の12月に撮影した「Memphis Beat」というテレビドラマが放映された。

俺が演じたのは、「エルビス・プレスリー」のモノマネ師の役。
かなり難しい役だったが、自分なりにできる限りの準備をして撮影に臨んだ。

努力の甲斐あってか、現場で監督やプロデューサーに認められ、
3曲あった「歌うシーン」も、自分の声で歌う事ができた。


そしてそのドラマが、いよいよ今夜放映された・・・らしいのだ!


・・・と言うのも、忙しすぎて、俺自身はまだ観ていないのだ。

でも、マネージャーの「マイク」から電話があって、
どうだったかは聞いている。


・・・「マイク」によれば、


俺のシーンが・・・、   無い   そうだ。


・・・んがーーーーーーーーーーーーん!


がーーーーーーん!


がーーん!


カットされた!カットしやがったな!チクショー


・・・確かに、主役とは全く絡まない役で、
本筋のストーリーとも一切関係ないので、
もしかしたらカットされるかも・・・とは思っていた。


でもまさか、本当に丸々カットされるとは・・・。


全力でオーディションに挑み、勝ち残り、
夜も寝ないで準備して、練習して、
たとえ現場で大成功を収める事ができたとしても、
編集室でバッサリ切られるこの業界・・・。

厳しいなあ。まったく。


よーし。こん畜生。負けねえぞ!!


落ち込んでいるヒマはない。

俺は今、色々と・・・、そう、あの、あれだ。・・・忙しいのだ。 あの、いろいろと。
さあ、「やるべき事」に集中しよう。

投稿者 ユウキ : 23:54 | コメント (22)

2009年12月21日  テレビ

一発勝負

朝の10時40分に、ホテル前に集合し、撮影本部へ移動。

衣装に着替え、メイクを済ませ、それから・・・午後4時まで待機。


「指揮者」の方の「好きにやらせる」発言があったので、
待機中はメンバーと合同でリハーサルを行った。

・・・よし。いい感じだ。


そして、いよいよ・・・セットに呼ばれた。


まず、それぞれの役の配置を決め、リハーサルを行う。

「指揮者」の方、「統率者」の方、そしてスタッフを前に、
俺はそこで初めて、「音楽」を披露した。

・・・ニューヨークのストリートで培った、耳をつんざく「爆音」がセット内にとどろく。

そのあまりの音量に、皆は目を見張った。


台本上では、このシーンは、
俺の「音楽」が大きすぎて、会話が聞こえない・・・というシーンなのだが、
実際に、俺の「音楽」がデカすぎて、会話が聞こえないのだ。


向こうで、「指揮者」の方と、「統率者」の方と、「音声」の方が、
話し合いを始めた。


 「『お手本』どおりに『口パク』で動いて貰わないと、編集が・・・」

 「でも、明らかにこっちの方がいいじゃないか。」

 「僕もそう思う。これは、どうにかならないかな。」

 「じゃあ、別撮りで行こう。
  ユウキの『音楽』を別カットで撮影すれば、
  編集の繋ぎを考えなくて良くなる。」

 「・・・なるほど、それならなんとか。」

 「うん、これは、絶対に本人にやらせるべきだ。
  だって、すっげえいいもん。迫力が全然違う。」


話合いが終わった。


 「ユウキ、君に実際にやらせる。準備しといてくれ。」


うおおおおおおおおおおおおおおッしゃあああああぁあああぁああああああああ!!!!!!!


「音楽のシーン」は、全部で3つあった。
そして、その全てを、俺は「自分で」やった。

登場シーンも、元々は4シーンだったのに、
どういうわけか増えて、7シーンになった。

セリフも微妙に増えた。
俺の顔のアップも、大幅に増えた。

そして何より・・・俺の声だ。


・・・俺の役は、元々の「ただのウケ狙いのアジア人」から、
ちゃんとした「登場キャラクター」の一人に、現場で成長したのだ。


俺の撮影が終わったのは・・・、朝の3時だった。


・・・やった。

  ・・・やった。 やったっ!!!!!

よっしゃあああああああああああ!!!!


・・・さあ、ハリウッドに帰ろう。
そして・・・、少し休もう。さすがに疲れた。

投稿者 ユウキ : 12:28 | コメント (10)

2009年12月19日  テレビ

コロシアム

今日も撮影が休みだったので、自主練習に励んだ。


・・・いよいよ明日、全てが決まる。

できる事は、全てやった。
もし駄目でも、悔いは無い。

最後の最後まで、諦めずに撮影に臨もう。

投稿者 ユウキ : 23:38

2009年12月17日  テレビ

雲の切れ目

昨日からの雨は、収まるどころか、激しさを増していた。

今日は午後2時10分にホテル前に集合だったので、
俺はその1時間前から通りに出て、
誰もいない駐車場で、一人「音楽」を練習していた。

・・・よし。大丈夫だ。行ける。

集合時間の10分前に、ホテル前に戻り、
他の5人の「メンバー」と合流した。

5人のうちの一人が、
朝の4時半まで、カジノで遊んでいた事を
さも自慢げに話している。

・・・熱意の欠片も感じられない。

給料を貰い、渡航費を貰い、
宿泊費まで貰っておいて、
どうしてこの人は、夜中まで遊んだ後で、「適当な仕事」ができるのだろう?

まったく理解に苦しむ。


撮影本部に到着し、衣装に着替え、
メイクを終えて、2時間ほど待機したのち、
セットへと移動した。


それから・・・午後10時まで、撮影だった。


結果から言うと、今日は「問題のシーン」を撮影しなかった。
今日の俺達の役回りは、「その他大勢」だったんだ。

「問題のシーン」の撮影は、日曜日だそうだ。


撮影中、ふと、「指揮者」の方が、口を開いた。

 「・・・あの『音楽』のシーンだけど、
  君ら、『お手本』とは別に、何か用意してるんだろ?
  そのシーンは、君らの好きなようにさせるから。」


・・・え?


  ・・・おおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!


これは・・・、まさか・・・、そういう事なのか!?


・・・でも、喜ぶのまだ早い。
たとえ「指揮者」の方がこう言っても、
「統率者」の方が現場で反対したら・・・、それまでだ。

・・・とにかく俺は気を抜かないで、全力で準備に励もう。


土曜日にリハーサルをしようか、という話が持ち上がったが、
5人のメンバーうち、不真面目な2人が反対したので、話が流れた。

どうなる事やら・・・

投稿者 ユウキ : 23:46 | コメント (3)

2009年12月16日  テレビ

操り人形

午後2時40分にホテル前に集合し、
撮影本部へと向かった。

衣装合わせを済ませ、
リハーサルのためにセットへ移動。

今回の俺の役は、
「6人組」のリーダーという位置付けなので、
他の5人のメンバーと、公園の片隅で自主リハを行った。

かなり良い「音」が出ていたので、
公園で遊んでいた少年達が、
近くに集まって、踊り始めた。


・・・行ける気がする!!


そこに、「統率者」の方々が来て、
今回の撮影方式の説明を行った。

予定通り、「お手本」にピッタリ合わせる、という事だ。


俺は、クビになるかもしれない事を覚悟の上で、
自分の気持ちをストレートに伝えた。

・・・それを聞いて、統率者の方は目を丸くした。

 「ええ?でも、あのお手本は、確か日本人のはずだけど・・・?」

そこで、メンバーの中の日系俳優が口を開いた。

 「僕も日系だけど、あの訛り方は、日本人の訛りじゃないと思う。
  あのアクセントは、色々とおかしいよ。」


・・・「統率者」の方々は、理解を示してくれたけど、
「技術的な問題」と「権利上の問題」があって、
俺の希望には添えないかもしれない、と言われた。

そして、まずは「技術的な問題」を説明してくれた。


 編集の段階で、それぞれのカットをくっつけて、
 一つの流れにするわけだけれど、
 俺達の「音」のスピードがズレると、繋がらなくなる。

 ・・・だから、「お手本」のスピードを常にキープしなければならない。


そして、次に「権利上の問題」を説明してくれた。
更に分かりにくい説明になるけど・・・、つまりはこういう事だ。


 今回、俺が演ずるのは、「オリジナル」の「コピー」の役。
 でも、「オリジナル」の真似をしてはいけない。
 何故かというと、「オリジナル」の許可が下りない。
 だから、こちら側が用意した、
 既に承認済みの「お手本」の方が、都合がいい。


ぐ・・・。これは・・・。

・・・とにかく、現段階でできる事はやった。
あとは、「統率者」の方々が判断する事だ。

俺は・・・ベストを尽くすのみ。


予定に変更があって、夜の10時まで待機しただけで、
リハを行う事なく、撮影が終わってしまった。

さあ、明日はいよいよ本番だ。・・・頑張ろう。

投稿者 ユウキ : 23:40 | コメント (3)

2009年12月15日  テレビ

ねりわさび

朝の8時半に迎えが来て、飛行機に乗り、
アメリカ南部のとある街にやってきた。

・・・よし、これから1週間、頑張ろう。

飛行機を降りて、撮影本部へと直行し、
「衣装合わせ」を済ませた。

俺の今回の衣装は・・・実に派手だ。
すごく・・・キラキラしている。


 「はい、これがユウキの『お手本』ね。」


スタッフの方から、
『お手本』が収録された「とある機材」を手渡された。

・・・うっ、とうとう来た!

今回の俺の役は、
このお手本に 「ピッタリと合わせる事」 が、
大前提となっていたのだ。

恐る恐る、「お手本」をヘッドフォンで聞く。


・・・。


 ・・・ぬぁんじゃこりゃぁぁあああぁああああ!!!!!!


なんだこの似非アクセントは!!!!
ふざけるなッ!!!!

この「お手本」に合わせて、俺に動けというのか!
なめるな!!!


第三者による、「俺のお手本」は、
無理やり取ってつけた「訛り」のせいで、酷い事になっていた。


・・・待て!落ち着け!

 
 これは、想定内なのだ。


・・・最初から、決まっていた事なのだ。
  俺も、それを百も承知で、この仕事を受けたんじゃないか。


俺の今回の仕事は・・・、そう、「これ」を覆す事だ。

用意された「お手本」を、超えるのだ。

・・・そのために、キャストされてから今日まで、
夜も寝ないで、死ぬ気で準備したんだ。


 ・・・よし、落ち着いた。


明日からが、本当の勝負だ。
俺は、絶対に「お手本」に勝つ!

そして、作られた「日本人像」を変えてみせる!!!クソったれがあああ!

投稿者 ユウキ : 23:27 | コメント (2)

2009年12月14日  テレビ

南へ

いよいよ明日から「とあるテレビシリーズ」の撮影だ。

・・・やれる事は全てやった。
あとは現場で、「あらかじめ決まっている事」を、どう覆すか・・・だ。


きっと今回は、かなりキツイ目を見る事になるだろう。
・・・とにかく、全力でぶつかろう。

投稿者 ユウキ : 23:50

2009年12月07日  テレビ

岩の王

とあるテレビシリーズの撮影に出発するまで、
もう、残りあと1週間。

最低限、目を通さなきゃいけない「資料」は、
まだ、これだけある。


DVD × 12枚
VHS × 2本
CD × たくさん

ま・・・間に合う・・・のか?


・・・とにかく、やれるだけの事をやろう。
俺には、それしかないんだから。

投稿者 ユウキ : 23:08 | コメント (2)

2009年12月02日  テレビ

黒・白・青・皮・石

とある新作テレビシリーズのプロダクションから
正式に出演オファーが入った。

よっしゃあああああああああ!!


・・・この役は、実に特殊だ。
俺がこれまでに演じた、どの役とも全く違う。

下手したら、一言も喋らないかもしれないけど、
インパクトは、大きい・・・と思う。

とにかく、俺はこの役を演じれるだけで、嬉しい。
日本人俳優の「新しい可能性」を感じる役なのだ。


・・・さあ、これからが本番だ。

撮影まで、もう2週間もない。
全身全霊を込めて、全力で準備に取り掛かろう。

投稿者 ユウキ : 23:47 | コメント (3)

2009年11月30日  テレビ

あられミックス

とある新作テレビシリーズに「二次資料」を提出するため、
21時間ぶっ通しで「とある事」を練習し、
それを編集して、1分30秒の「ファイル」を作成した。

つ・・・疲れた。

この「とある事」は、ただ練習するだけで、
かなりの騒音を発するので、
布団を頭から被って頑張った。

正直言ってかなりしんどかったけど、
それに見合うだけの物ができたように思う。

・・・さあ、プロダクションにこの「ファイル」を送ろう。
果たしてどうなるかな・・・。

投稿者 ユウキ : 11:12

2009年11月23日  オーディション★2

監獄音頭

先日オーディションに応募した「とあるテレビシリーズ」の
キャスティングから、連絡があった。

なんでも、俺の送った
「音楽ファイル」と「デモテープ」が、
製作側の方々に、大好評だったらしいのだ。


 「ユウキは、○月○日~○日まで、
  予定は空いてるかしら・・・?
  最有力候補として考えているのだけれど。」


おおおおおお、すげえ!!
・・・死ぬ気で「音楽ファイル」を作った甲斐があった。

これはもしかすると・・・もしかするのでは!?
期待しすぎない程度に期待して、続報を待とう。

投稿者 ユウキ : 23:39

2009年11月18日  オーディション★2

もみあげ隊

新作テレビシリーズの、「とある役」のオーディションに応募した。

大きな役ではないけれど、
俺はどうしても・・・、「この役」が演じたいのだ。

・・・だって、「こんな役」は、滅多に来ない。

通常日本人に回ってくる役・・・、
サラリーマン、観光客、寿司職人、ヤクザ、空手家、忍者、侍、日本兵・・・、
とは、明らかに一線を隔している。

オーディションに呼ばれるといいなあ。

投稿者 ユウキ : 23:58

2008年12月10日  テレビ

肌色の檻の中で

「新作テレビシリーズ」の撮影で、
俺はこれまでに経験した事のない「地獄」を見た。


キャストされてからというもの、
俺は一刻一秒を惜しんで役作りに励んだ。
・・・でも、やはり時間が足りず、またも中途半端な出来になった。

時間が足りないので、現場に入ってからも、
トレーラーの中で勉強だ。


役者が役者としての仕事をまっとうできない、
これほど情けない事はない。

とにかくベストを尽くさねば!


もう、衣装の事は諦めた。
メイクの人に、「いびつな七三分け」にセットされたけど、それもOKだ。

とにかく、俺は自分の演技に集中だ!


俺が今回演ずる役は、「日本人研究員1」。
セリフは全て、同僚の「日本人研究員2」との掛け合いだ。

====

研2「・・・えー、それが、○○○○である・・・と。」(資料を説明している)

俺 「・・・えーと、これは資料が何枚か、抜けてませんか?
    この説明で理解できますか?」 (同僚の研究員に)

研2「え、ええ、理解できますよ。(本当は理解していない)
    私たちのビジネスを、根本的に変えるでしょうね!
    ・・・分かりませんでした?」

俺 「・・・いえ、、あの、分かりますよ!
    ただまあ、あの、
    もう一枚くらい資料があった方が、分かり易かったなー、
    と、思っただけなんですけどね。・・・ええ。」

====


・・・よし。頑張ろう!


俺は、「日本人研究員2」を演ずる
シーンパートナーの「日本人俳優」に挨拶しようと、
その俳優のトレーラーに向かった。

トレーラーには、「日本人研究員2」を演ずる俳優の
ネームプレートが掲げてあった。


 なるほど、日本人研究員2を演ずるのは・・・「Kさん」か。

 ん・・・、待てよ・・・、「Kさん」・・・?


 ・・・まさか、「あの」、Kさん? そんな馬鹿な・・・!


俺は言葉を失った。
だって、この「Kさん」、名前は日本人名だけど、日本語を全くしゃべれない。
その昔、俺の俳優仲間と、
一緒にテレビCMに出ていたから、知ってるんだ。

そこで「Kさん」は、日本語でセリフを言うはずだったんだけど、
彼が喋っていたのは、全く理解不能の、「ニほンご」だった。

 「ほヌれ!ふーソ、チュキよて!
  くヌれら、チャカちゅくじょ!
  あー、そー、そー。」

「聞き取りにくい」というレベルではなく、
冗談抜きで、堂々とこう喋っていた。

まさか「日本人研究員2」を演ずるのは、その「Kさん」なのか・・・?


 でも、それはおかしい。どう考えてもおかしい。


だって、今回の「日本人研究員」の役への応募条件は「日本人俳優」だったはずだ。
しかも、「日本語が完璧に話せること」と、そこにハッキリ書かれてあった。
普通に考えれば、彼は応募できないはずだ。


 ・・・では、なぜ彼がキャストされたのか。


おそらく、彼が「自分は日本語を完璧に喋れる」とウソを吐いたから・・・だろう。
自分が日本人名である事を利用して、
堂々と「ニほンご」で演技したのだろう。


・・・これは困った。

とにかく、まずは彼が、
ちゃんと自分の日本語のセリフを練習しているか、探りを入れなければ。

しっかりと練習してくれていれば、なんとか乗り切れるはずだ。


俺 「やあ、Kさん、ユウキです。よろしく!」

K 「よろしく!」

俺 「あれ?Kさんって、日本語喋れたっけ?」

K 「うん、喋れるよー」

俺 「・・・そっか。ちょっと、セリフを一度、通さない?」

K 「いや、本番まで遠慮しておくよ。」


うわあああああああ、こいつ、確実に練習してない!練習する気がない!
最後まで誤魔化し通す気、満々じゃないか。


・・・これはまずい。

彼は本番で、セリフを無視して「ニほンご」で演技するつもりだ。
どうにかして、食い止めなければ。
しかし一体、どうすれば・・・?


俺は策を練った。


・・・まずは、彼の「ニほンご」を封印する必要がある。
そのためには・・・、彼がセリフを間違えたら
監督に、即バレるようにすればいい。


・・・よし、これでいこう。


俺はまず、彼の日本語のセリフを全て発音表記に直し、
アメリカ人でも発音できるようにして、それを監督に提出した。

「私たちのビジネスを、根本的に変えるでしょうね。」
 ↓
Watersh Touchy no, business wo
Kong Pong Tecky nee, Ka elu de sho- ne.


そして、監督に事情を説明した。
監督の顔に、緊張が走った。

監督「・・・そんな馬鹿な。
    日本語が喋れるって条件だったじゃないか・・・。
    ・・・ユウキ、教えてくれて、本当にありがとう。
    これが無ければ、セリフのチェックができないところだった。」


・・・もう、後には引けない。

俺は覚悟を決めると、発音表記のセリフを手に、
「Kさん」のトレーラーのドアを叩いた。


俺 「Kさん、ちょっと話したい事があるんだけど、いいかな。」

K 「ん、なに?」

俺 「・・・Kさん、日本語喋れないよね。」

K 「まあ、喋れるよ。」

俺 「・・・俺さ、Kさんの日本語CMを見た事があるんだけど。」

K 「・・・。」


Kさんは、俺にバレている事に、ようやく気がついたようだ。
俺は、発音表記に直したセリフを、Kさんに差し出した。


俺 「これ、セリフを発音表記に直したものだよ。
   これを練習すれば、とりあえず、大丈夫だと思う。
   ・・・だから、一緒に練習しよう。」


俺は、これで全てが収まると予測していた。
でも、この後の「Kさん」の反応は、俺の予想を超えていた。


K 「・・・いやさ、別にいいじゃん。」

俺 「・・・? なにが?」

K 「別に日本語喋らなくても、いいじゃん。
   製作側の人とか、絶対に気にしないよ。」


・・・まさか正当化されるとは思ってなかった。


俺 「いや、気にするよ。
   気にするから、キャスティングの段階で、
   『日本語を完璧に喋れる事』って書かれてたんだろ。」

K 「どーせ、分かんないから。
   俺が日本語を話してるかどうか、
   製作側も、視聴者も、絶対分かんないから。」

俺 「いや、分かるよ。
   俺たち日本語が喋れる人は、一瞬で分かる。」

K 「そんなの、ごく一部じゃないか。
   あのさー、君にはこの役は
   ものすごい大きな役なのかもしれないよ。
   でもね、所詮3分程度のちっちゃいシーンだから、
   どーでもいいんだって。」


・・・こいつ、俳優を何だと思ってんだ!

ここまで俳優業をナメきった奴は、初めてだ。
プライドも、責任も、何も感じられない。

なんでこんな奴に役が取れるんだ。
フツフツと怒りが込み上げてきた。


K 「例の人気テレビシリーズを観てみろよ。
   日本語が喋れない役者が日本人を演じても、
   特に問題ないじゃないか。」

俺 「・・・いや、彼らは日本語で喋ってるよ。
   確かに流暢ではないかもしれないけど、
   アクセントコーチを付けて、日本語で喋ってる。
   でも、その日本語が原因で、
   初期にどれだけバッシングされたか、
   まさか知らないわけじゃないだろう?」

K 「ああ、知ってるさ。
   日本人は人種差別主義者だからな!」

俺 「『日本人の役は日本語で喋るべき』、という事の
   どこが人種差別なんだ?
   ハリウッドは『アジア人』を一まとめにするけど、
   それぞれ文化も言語も違う事くらい、君自身が良く知ってるだろ!
   君こそ、日系なのに、
   日本の文化を尊重する気が全くないのは、なんでなんだ?」

K 「・・・。」

俺 「・・・あのさ、もう日本語でセリフ喋る気、無いの?
   無いなら、もう、何も言わないよ。
   君の好き勝手にやればいい。
   俺も、今すぐこのトレーラーから出る。」

K 「・・・。」

俺 「・・・。」


Kさんは、俺の書いたセリフの紙を受け取った。


俺 「・・・読み合わせ、する?」

K 「・・・いや、それはいいよ。」

俺 「分かった。・・・ありがとう。」


俺はトレーラーから出た。
あまりにショックで言葉が出ない。


アメリカのテレビドラマや、映画で時々登場する、
全く理解不能な、「日本語のようなもの」、
俺はその原因は「製作側」にあると思っていた。

製作側が、「アジア人は皆同じだから、日本人じゃなくてもいいや」、と、
いい加減な気持ちでキャスティングしているからだ、と思っていた。

・・・だが、今回は全く違う。

製作側はちゃんと「日本語を喋れる日本人」を募集していたのに、
役者側がそれを欺いた。


こんなにショックな出来事は初めてだ。
しかも、今回は相手が日系俳優だから、なお更だ。


・・・たとえば日本人が映像界に進出して、
「日本人」の役を独占したら、どうなるのか。

当然、今まで「日本人」を演じてきたアジア系俳優は、仕事が無くなる。

・・・俺はそれが理想の状態だとも、全く思えない。


アジア系俳優が、「アジア人」という枠を超えれず
どれだけ苦労しているか、よーく分かっているし、
自分自身が日本人以外の役を演ずる可能性を、閉ざしているのと同義だ。


・・・ちゃんと、努力してくれれば、いいんだ。

誠心誠意、自分が出来る限り、努力してくれれば、いいんだ。


例のテレビシリーズを見てほしい、みんな、努力している。
ちゃんと日本語を喋ろうと、役者が本気で努力してくれている。

結果的にそれが、「ちゃんとした日本語」になってなかったとしても、
本気で努力してくれたら、やっぱり嬉しいじゃないか。

敬意を払ってくれたら、嬉しいじゃないか。


Kさんはその後、限られた時間で、「努力」してくれた。

もちろん、付け焼刃だったので、セリフはボロボロだった。
でも、彼が初めて本気で日本語を喋ろうとしてくれている姿は、嬉しかった。


・・・俺は一体、どこに向かっているんだろう。

俺は今、いつかアメリカ人の役を完璧に演ずるために、
英語を本気で勉強しているが、果たしてそんな事が可能なんだろうか。

どんなに頑張っても、アメリカ人から観たらバレバレで、
鼻で笑われる程度になるんだろうか。


・・・いや、絶対に、やり遂げてやる。
自分自身は日本人でありながら、
「アメリカ人にもバレないアメリカ人」をいつかきっと演じてやる。

・・・いつか、絶対に。

投稿者 ユウキ : 23:55 | コメント (6)

2008年12月08日  テレビ

波打ち際の攻防

今日は「新作テレビシリーズ」の衣装合わせに行ってきた。

俺が今回演ずるのは、「日本人研究者」の役だ。

セリフは2行の小さい役だけど、
そのシーンの設定は日本で、セリフも日本語だ。

・・・これは責任重大だぞ。


キャストされてからの2日間、
俺は昼夜を問わず「研究者」について調べ、
今日に備えてきた。

 「研究者」とは、何か。
 どのような種類の「研究者」がいるのか。
 演ずるにあたって、俺は何を学ぶべきか。
 そして、自分の役に、どのような人生を与えるか。

全神経を集中させ、可能な限り本気で勉強した。



・・・これも全て、今日の「衣装合わせ」に間に合わせるためだ。

撮影当日に何かを「修正」しようとしても、
撮影スケジュールが詰まっているので、限界がある。

もしも、何かを「修正」したかったら、
今日の「衣装合わせ」でやらないと、間に合わない。


衣装「あなたが日本人研究者ね。」

俺 「ええ。よろしくお願いします。」

衣装「じゃ、さっそくこの『白衣』に着替えてもらえるかしら。」

俺 「えっと・・・、これですか・・・? 
   ・・・僕はこの『灰色の白衣』を着るんですか?」

衣装「ええ、そうよ。」

俺 「・・・『灰色の白衣』を着た日本人研究者を
    見た事が無いのですが・・・。」

衣装「あら、そうなの。」

俺 「あの、日本の研究者は、
   医療系や薬学系は『白い白衣』を着る事もあるんですが、
   設計や開発を担当する、製造業の研究者は、
   『作業服』という、企業ごとの制服を着てるんです。」

衣装「そうだったの。」

俺 「一応、ここに資料を用意してあるんですが。」



衣装「あらそうなの。わざわざ、おつかれさま。
    でも、もう『灰色の白衣』で決定してるから。」

    じゃ、着替えて。」


うわあああーーー、
いてええええええ!!!

衣装さんは、俺の話を聞いてくれないし、興味も無いようだ。
俺の2日間の努力は、見るも虚しく砕け散った。


まだこの前の「子供向けテレビシリーズ」の衣装さんの方が、
「本来の姿」にしようと努力してくれてたように思う。
でもこの人には、その意欲すら感じられない。

・・・何を言っても、無駄だ。


俺は心底ガッカリして、『灰色の白衣』に着替えた。

幼稚園児が着る「スモック」のような
「灰色の白衣」を着た俺は、相当マヌケだ。

一気に憂鬱になった。


 ・・・あ、そういえば、「企業ロゴ」はどうなったんだろう。
   この調子だと・・・、


俺 「・・・あの、企業ロゴはどうなってるんでしょうか。
   ちゃんと日本語になっているのでしょうか。」

衣装「さあ、どうかしら。
    どちらにしても、もう最終決定してるから、
    修正はできないわよ。」

俺 「・・・一応、見るだけでも、できると嬉しいのですが。」

衣装「美術さんのところで、聞いてみたらどうかしら。」


俺は急いで美術さんの所へ向かった。
・・・もしかしたら、まだ間に合うかもしれない!


美術「えーと、これがリストよ。
    日本支社だから、
    英語のロゴに、『日本』の文字が入ってるわけね。」



・・・うわ。


俺 「・・・で、何番が選ばれたんでしょうか。」

美術「えっとね、たしか(1)だった気がするわ。」

俺 「・・・そうですか。

   あの・・・、このロゴは、もう修正不可能なのでしょうか。
   少しだけ修正する事は可能でしょうか。」



美術「わあ、凄いわね!!
    あなたが作ったの!?リアルね!」

俺 「・・・さっきのリストだと、
   『日本』の字体が、『毛筆』になっているのですが、
   この名札のように、『ゴシック体』に変更したりする事は、
   果たして可能でしょうか。」

美術「うーん・・・、ちょっと無理ね。
    もう作っちゃってるから。
    ごめんなさいね。」

俺 「・・・いえ、いいんです。
   お邪魔して、すみませんでした。」


・・・ああ、駄目だった。

今まで、これほど無力感を感じた事はない。


あさって、俺は、
 「灰色の白衣」を着て、
 「妙なロゴ」を付けて、
 「リアルな演技」をしなきゃイカン。


・・・こんな感じか。



・・・こうして見てみると・・・、絶望するほど悪くはないか・・・。

椅子に腰掛けていれば・・・、「作業服」に見えなくもない・・・。

・・・外資系の研究機関だから・・・、他と少し違うだけさ・・・。


もう嘆いても仕方が無い。

俺は「衣装担当」でも、「美術担当」でもない。
ただ雇われただけの「演技担当」だ。

自分の演技に集中しよう。

投稿者 ユウキ : 23:29 | コメント (5)

2008年12月05日  テレビ

ウォッキー

このまえ二次選考に参加した「新作テレビシリーズ」に、
俺が「日本人研究員」の役でキャストされた。

 よっしゃあああああっ!!!


 ・・・ふぅ、危なかった。

残金は$400を切ってた。
これでまたしばらくは持ちそうだ。


テレビなので、撮影はもう来週だ。

・・・時間が無い。
大至急リサーチを始めて、
しっかりと役作りをして、撮影に臨みたいと思う。


よし、本気で行くぞ!

投稿者 ユウキ : 23:40 | コメント (4)

2008年11月24日  テレビ

カステラには牛乳

先週の月曜日に参加した、
「新作テレビシリーズ」の、二次オーディションに呼ばれた。

 ・・・よし。さい先いいぞ!


さすが二次選考だけあって、
オーディション室内には、関係者が6名もいた。

みんな気が張ってる様子はなく、
フレンドリーで、和気あいあいとしていた。


俺のセリフは2行だけなので、
オーディション自体は1分もかからなかった。

出来は・・・50点。まあまあだ。
一次オーディションの方が良かったように思う。


よし、次に向け、また気合を入れよう。

投稿者 ユウキ : 23:06

2008年11月17日  テレビ

バジャバジャ

今日は、「新作テレビシリーズ」のオーディションに参加した。

俺が演じたのは、「日本人研究員」の役だ。


まずは「研究員」について調べ、学習し、
セリフを英語から日本語に翻訳し、それを完璧に覚え、
台本に書かれてある通り、白衣を身にまとった。

・・・それから、「自作のでたらめ名札」を付け、
「なんちゃってPHS」を首からぶら下げて・・・



・・・よっしゃ、これで完璧だ!


 さあ、オーディションに行こう!
 今度こそは役を取る!!


オーディション会場には、
「ヘッドショット(顔写真)による一次審査」をパスした
日本人の俳優仲間達が何人か待機していた。


お互いに、ベストを尽くして頑張ろう。


結果は、60点だった。

・・・うん。悪く無い。
やるだけの事はやった。

よーし、落ちた! さあ、次行ってみよう!

投稿者 ユウキ : 23:02 | コメント (3)

2008年11月08日  テレビ

魅惑の国、ジャパン

5月に出演した、子供向けテレビシリーズ「iCarly」の
テレビ映画、「iGo to Japan」が放映された。

    オンラインで視聴できます   視聴方法
    (出演シーンは、50:34から)

うーむ、「ハリウッドのジャパン」は今日も絶好調だ!!
ドーカ 暖カーイ 目デ 見テ アゲテ 下サーイ ネー


 俺が演じたのは、タクシーの運転手だった。



・・・よかった。セリフはカットされてない。

小さい役だけど、色々と反省すべき点がある。
この経験を次に生かしたいと思う。

さー、勉強しよう!

投稿者 ユウキ : 23:49

2008年05月29日  テレビ

どちらまで?

いよいよ運命の撮影日がやってきた。

案の定、最新版の台本には修正が加えられていた。
俺のシーンも微妙に変わっている。

俺の「2行のセリフ」は、まだ残っているのだろうか・・・?

台本をめくる手が震える。


 ・・・えーと、一つ・・・、二つ・・・、三つ・・・と。

  三つ・・・??


 セリフが一つ増えてるぅうううう!!!!


なんと、俺のセリフは減らされてなかった!!

それどころか、「2行のセリフ」が「3行」になった!!
1.5倍だ!50%の増量だ!


すんばらしいっ!一気にやる気になったぞ。


++++


俺の車内のシーンは、「ブルースクリーン(青い幕)」の前で撮影した。
後で背景を合成して、実際に走っているように見せかけるんだそうだ。


監督の期待に応えるため、俺は全力で演技した。
ここまで用意してきたものを、全て出し切った。

全部で10テイク撮ったんだけど、
1テイクごとに、脚本家の方が
どんどん現場でセリフを変更していくのには驚愕した。

最後の瞬間まで、「一番面白いシーン」と作ろうと必死なんだ。


車を台車に乗せて、その台車をスタッフが
手動で揺らす事によって、臨場感を演出する。

スタッフと役者が一丸となって、
良いシーンを作る為に全力を尽くした。


・・・これがシットコムの現場か!熱いな!


実は、今日の撮影の為に、
俺は自前で「乗務員証」を作って、車内に設置していたんだけど、
そこら辺の細かい部分は映ってないそうだ。うーむ、残念。


果たして、俺はまともに演技出来ていたんだろうか。
セリフはしっかりと言えていたんだろうか。

・・・そして何よりも、「面白いシーン」になっているんだろうか。


 心配だ。


後は編集でセリフが切られない事を祈りつつ、
9月あたりの放映を待ちたいと思う。

投稿者 ユウキ : 23:26

2008年05月27日  テレビ

戦慄のお遊戯会

子供向けテレビシリーズの2度目の「リハーサル」に参加した。

この「リハーサル」っていうのは、
つまりは「撮影のリハーサル」の事なんだけど、
俺たち役者にとっては、「本番」とほぼ同じだ。


・・・それというのも、悪夢のような「発表会」があるからなんだ。


リハーサルでは、まず監督が
シーンの中での役者の「立ち位置」を決め、
ジョークのタイミングを指示する。

それから、一通りそのシーンを通してみて、
更に細かい手直しを加え、
しっかりとした「面白いシーン」を作り上げる。


・・・そして、プロデューサーと脚本家の目の前で
たった「一度だけ」、そのシーンを発表してみせるんだ。


そこで、プロデューサーや脚本家に
演技がウケれば、そのシーンは残るし、
つまらなければ、何らかの変更が入る。

役者の演技が下手だったらセリフを減らすし、
逆に面白ければ、セリフが増える。


・・・まったく、なんつー実力主義社会だ。

生き残りたければ
今ここで実力を証明しなければならないんだ。


もうすぐ「発表会」が始まる。

俺は自分に与えられた「2行のセリフ」を、
何に変えても死守しなければ!


++++


実際に撮影に使う「キハダマグロ・タクシー」の車内で、
俺は他の役者と「発表会」に臨んだ。

俺の2行のセリフは
コメディの要素がかなり低いので
正直言って、かなり不安だった。

でも、2行目のセリフを喋った時、
プロデューサーが爆笑した。

 おおおおおっ!ウケたっ!!ウケたぞ!
 ・・・どうしてウケたのかは全くわからないけど。


・・・さて、プロデューサーの目に、俺の演技はどう映ったのだろうか。
明後日の撮影で、果たして俺のセリフは残っているのだろうか。

結果はもうすぐ明らかになる。
俺はとにかくベストを尽くそう。

投稿者 ユウキ : 23:15

2008年05月22日  テレビ

木漏れ日

いよいよ子供向けテレビシリーズの撮影日がやってきた。


この数日間、俺は「タクシー運転手」の役作りに没頭していた。

まずは、
「関連書籍」を読みあさり、その職種に必要な知識を身に付け、
「乗務員用の教育ビデオ」を観て、乗務員としてのマナーを学び、
「多くの人の経験談」を読み、それを自分の物として追体験する。

 ・・・よし、おぼろげながら、
 「本来あるべき運転手の姿」がイメージできたぞ。

次に、そのせっかく作り上げた「イメージ」をぶっ崩して、
世界に唯一の「一個人」を、再構成する。

・・・絶対に、「理想化されたタクシーの運転手」になってはいけないんだ。
そんな人間はどこにも存在しないのだから。


時間が許す限り、俺は本気で役作りに打ち込んだ。
しかし、今回は準備期間が足りず、
なんとも中途半端な出来になった。

 ・・・くそ。仕方が無い。あとはぶっつけだ。
 とりあえず今出来る事は全てやったんだ。


++++


俺の集合時間は午後6時。
スタジオの駐車場に設置されたオープンセットで撮影するらしい。

セットの雰囲気に慣れるため、
ちょっと早めの2時間前に現場入りした。


完璧な出来栄えの「タクシー運転手の衣装」に着替えて
待合室で台本を読んでいると・・・、
スタッフから恐ろしい話を聞かされた。

・・・なんでも、とある役者が、
本番直前にセリフを大幅にカットされたそうなのだ。

話によれば、本番直前のリハーサルで
その役者は「コメディのタイミング」を掴めず、
どーも面白くない、「イマイチな演技」になってしまったらしい。

すると、現場の判断で「4行近く」あったセリフが、
一瞬でたったの「2単語」まで減らされてしまったそうだ!

 ・・・ひえー、恐ろしい。

それじゃ、俺のたった2行のセリフだって、
本番まで残っている保障が全く無いじゃないか。

なんとも厳しい世界だ。


今日の俺のシーンの撮影はというと、かなり楽に終わった。
・・・というか、俺は殆ど何もしていない。

タクシーが路肩に駐車するのを
オープンセットで撮影する予定だったんだけど、
俺には安全上の理由から、
セット内で車を運転する権限が与えられていないんだ。

代わりに、俺に背格好の良く似たスタントマンの方が運転した。

今日撮影するシーンではセリフも無いので、
俺はとにかく影に徹した。


来週は、いよいよセリフのあるシーンの撮影だ。
全てを賭けて準備しよう。

2008_05_22_001.jpg

投稿者 ユウキ : 23:28

2008年05月21日  オーディション★2

天使は空に舞う

新作テレビシリーズのオーディションに行ってきた。

今回俺が演じたのは、主役級の「スペイン系の若者」だ。


・・・なんで日本人の俺が「スペイン系の若者」役のオーディションに
行く事になったかというと、
「人種はスペイン系に限らない」という注意書きがあったからだ。

だからと言って、日本人をキャストするとは思えないんだけど・・・


俺は今回のオーディションに限っては「かなり」消極的だった。


・・・だって俺は今、撮影中じゃないか!


確かに「タクシー運転手」のセリフは2行だ。
傍から見れば「楽勝」なのかもしれない。
でも俺はこの限られた時間全てを「タクシー運転手」の役作りに使いたいんだ。

オーディションの準備に使う余力は無い!!2行をナメたらいけない!!


「セリフを完全に覚えなくてもいいから。
 台本を手に持ったままでもいいから。
 とりあえず行くだけ行ってみてくれないかな。
 キャスティングディレクターが、ユウキを見てみたいそうなんだ。
 だって、スペイン系の役に日本人の君を呼んでるんだぞ?
 この役はテレビシリーズの主役級だぞ?
 滅多に無い事じゃないか。」


「・・・分かった。そこまで言うなら、とりあえず行くだけ行ってみるよ。
 でも、結果は期待しないでね。」


というわけで、6時間だけこのオーディションの準備に使う事にした。


6時間の間、俺は全力で取り組んだ。
17個のセリフを頭に叩き込んだ。

・・・でも、やっぱり上手く行かなかった。
寝不足で集中力が持続せず、本番で3回もセリフを間違えた。


くそ。悔しい。これが撮影中でなければ・・・。


・・・さあ、タクシー運転手だけに集中し、全力で取り組もう!

投稿者 ユウキ : 23:40 | コメント (3)

2008年05月19日  テレビ

寿司タクシー

子供向けテレビシリーズのリハーサルは
スタジオ内の実際のセットを使って行われた。

俺は、気合を入れて、スーツに白手袋という、
オーディションと同じ格好で参加した。

よっしゃ!やるか!


セットに入ると、そこでスタッフから「初めて」台本を手渡された。

・・・そう。俺はまだ、一度も台本を読んでないんだ。

予想はしていたけど、
まさか本当に、リハーサル当日に手渡されるとは・・・


待合室のソファに腰掛け、俺は冷や汗をかきながら台本に目を通した。

・・・俺のセリフは・・・2行。
 登場シーンは、約3~4分間というところか。

台本を読み終えて、俺はようやく胸をなでおろした。

・・・どうやら、俺がセリフを喋るのは
今日じゃなくて、「来週のリハーサル」みたいだ。

今日やるのは、セリフの無いシーンだ。

これなら、準備する事ができる。
・・・何とかなるかもしれない。


++++


さて、台本の初めの部分にキャストの一覧があるわけだけど、
どうも気になる事が2つある。


一つ目は、キャストそのものだ。

今回のストーリーは日本が舞台になっている。

だったら当然、日本人が数多く出演する・・・と思うかもしれないが、
現時点でキャストされている「日本人役」の7人のうち、
実際に日本語が喋れるのは・・・、俺だけのようだ。

俺のセリフは全て英語なので、日本語は出る幕が無い。


もう一つは、キャスト一覧の「タクシー運転手」の項目だ。

明らかに、「俺ではない役者の名前」が書かれている。

 ・・・これはどういう事だろうか?

元々は他の役者が「タクシー運転手」を演ずるはずだったが、
「何らかの理由」があって、俺に交代になったという事なのか。

って事は、オーディションの段階では、
俺は「第二候補」だったという事じゃないか。・・・うむむ。


でも、どうしてキャストが俺に変更されたのだろうか。

元キャストの「スケジュールの都合」だろうか?
それともプロダクション側が「心変わり」をしたのだろうか?


・・・今の俺にそれを確かめる術は無い。


++++


俺は気を取り直し、
タクシー運転手の「衣装合わせ」のため、衣裳部屋へと向かった。


衣装「あなたがタクシーの運転手ね。
    えーと、早速だけど、ジーパンと、白のTシャツって持ってるかしら?」

俺  「ジーパンとTシャツですか・・・?持ってますけど、またどうして?」

衣装「どうしてって、タクシーの運転手に決まってるじゃない。
    ・・・日本のタクシーの運転手って
    ジーパンにTシャツ姿じゃないの?ほら、ニューヨークみたいに。」

俺  「実は、日本のタクシーの運転手は、スーツを着てるんです。
     いま僕がしている格好が、日本のタクシー運転手のそれです。
     それに、何と会社によっては制帽まであるんですよ。

     ここに資料を用意してきましたので、どうぞ。」


衣装「へえー、用意がいいわね!!」

    ・・・へえ、なるほど。
    結構フォーマルなのね。パイロットみたいね。

    これ、カラーコピーしていいかしら。
    大至急、帽子のエンブレム(帽章)を作って貰わなきゃ。

    調べてくれて、ありがとう。感謝するわ。」

俺  「こちらこそ。どうぞ宜しくお願いします。」


・・・あぶないあぶない。
もう少しで、ジーパン姿でタクシー運転手を演ずる所だった。

必死でかき集めた約100ページの資料が、さっそく役に立った!
頑張った甲斐があったってもんだ。


スタッフの案内で、俺が運転する「タクシー」を見せて貰った。

左ハンドルの「フィアット500」いう赤い車だった。
ルパン三世が映画の中で運転している、あの小さい小さい車だ。

そして俺が働くタクシー会社は・・・「キハダマグロ タクシー」というらしい。


うん。


+++


さて、このテレビシリーズは、
「シチュエーション・コメディ(通称:シットコム)」と呼ばれる形態だ。

「テレビドラマ」というよりも、
「テレビ芝居」と言った方がしっくり来るかもしれない。

かの有名な「フルハウス」を思い浮かべて欲しい。
・・・そう、あれが「シットコム」だ。


衣装合わせも終わったので、
俺はメインキャストのリハーサルを見学する事にした。


見始めてすぐに、俺は頭から血の気が引いて行くのを感じた。

 ・・・ちょっと、冗談だろ。勘弁してくれ。

セリフの進む速さが、ハンパじゃない!
洒落にならないくらい速い!速すぎる!

だって、俺が台本を目で追うスピードよりも、
彼らの演ずるスピードの方が速いんだ。


 ・・・これが「シットコム」の標準スピードなのか!?


俺は縮み上がった。
まさか、ここまで世界が違うとは。

メインキャストは、その目にも止まらぬスピードの中で、
しっかりと決めるべきジョークを決め、
伸び伸びと演技していた。

数ページに渡る長いシーンでも、
セリフを完璧に覚えてスラスラとこなしている。


・・・凄い。正真正銘のプロだ。全く太刀打ちできない。


こりゃまずいぞ。

俺のセリフは2行だけど、
果たしてこのスピードについていけるんだろうか・・・


撮影まであと3日。

子供向けだろうが何だろうが、俺には関係ない。
本気で役作りに没頭しようと思う。

投稿者 ユウキ : 23:43 | コメント (2)

2008年05月18日  テレビ

エントツ

いよいよ明日は子供向けのテレビシリーズのリハーサルなんだけど、
まだ台本を受け取っていない。

もしかすると・・・セットで直に渡されるのかな。

・・・これはマズいぞ。

アメリカ人の俳優と違って、
日本人の俺は台本を理解するのに時間が掛かるんだ。

初めて見る台本のシーンを理解し、
声に出して正しくセリフを読み
かつ同時にしっかりと演技する、という3つが上手くできない。

・・・怖いなあ。
とりあえず、役作りだけはしっかりとして、明日のリハーサルに備えようと思う。

投稿者 ユウキ : 23:50

2008年05月17日  テレビ

あかり灯る

先日オーディションに行った、子供向けテレビシリーズから電話があり、
「タクシーの運転手」の役でキャストされた事を伝えられた。

・・・自分でもちょっと信じられなかった。

だって役設定に「完璧な英語を喋れる」と書いてあったんだ。
そして俺は、自分の英語力の無さを痛感している。

本当かなあ・・・?

とにかく、キャストされたのだから、責任重大だ。
全力でやりぬこうと思う。
早速、タクシーの運転手に関する資料を揃えて
勉強を始めなければ。

予定では、来週の月曜日にリハーサルだそうだ。
かあー、時間が無い。急がねば!

投稿者 ユウキ : 23:36

2008年04月29日  オーディション

ドアが開きます

子供向けのテレビシリーズのオーディションに参加した。

俺が演じたのは日本のタクシーの運転手だったんだけど、
役設定に 「完璧な英語を喋れる」 と書いてあるからキツい。

予想通り、オーディション会場にいた他の8人は
日本人じゃなくて「アジア系俳優」だった。


セリフは全て英語、
 ・・・つまり、プロダクション側は日本人に一切こだわらない。

たとえセリフが日本語だったとしても、
「日本人の役」を日本人が取るのがどれほど難しいか、
俺はもう、身に染みて分かってる。


とりあえず、衣装は完璧。白い手袋までしてる。

あとは英語と演技だけだ。


・・・オーディションは、意外と上手く行った。
60点くらいの出来だ。

自分がいくら満足した所で、この役でキャストされるのはたったの1人。

オーディションは、受け終わった瞬間から「落ちた!」と思って
次を目指さなければならない。


よーし、落ちた!今度こそ頑張るぞ!

投稿者 ユウキ : 23:14 | コメント (2)

2006年11月28日  テレビ

英雄達

先月の27日に撮影した
NBCの人気テレビシリーズ「HEROES(ヒーローズ)」が昨夜放映された。

出演時間はほんの数秒だったけど、
テレビシリーズに出演するのは初めてだったので、色々と学ぶ事が出来た。

よーし。次へ行こう!

次はもう少し大きな役を取りたい。
その為にも、引き続き全力で頑張ろうと思う。

投稿者 ユウキ : 23:28 | コメント (15)

2006年10月27日  テレビ

複数形

テレビシリーズの撮影は、本当にテンポが速かった。

朝の7時に集合し、メイクと衣装チェック。

8時にリハーサル。
8時半に衣装に着替え、
9時に撮影開始

11時に撮影終了

確かに短いシーンではあるけれど、
たった4時間で全てが終わってしまうとは!


セットは活気で満ち溢れていた。

中でも監督は特にやる気がある人で、
1分1秒を惜しんで撮っている感じだった。


ここで俺に求められているのは「豊かな表情」なので、
それだけは特に気をつけた。

あとはセリフがちゃんと言えてると嬉しいんだけど・・・


11月末か12月の初めらへんにNBCで放映される予定だ。
楽しみに待っていよう。

投稿者 ユウキ : 06:25 | コメント (4)

2006年10月26日  テレビ

ズロヒ

テレビシリーズの撮影で黒色系のスーツを持って来るように言われた。

俺の持ってるスーツは古着屋で$19購入した物なので、
とても人様にお見せ出来るような物じゃない。
ブカブカのヨレヨレだ。

そこで、Marshalls(マーシャルズ)という大型衣料店へ行って、
上等なスーツを一揃え買ってきた。

値段は$160。

高っ!

・・・いや、俺の感覚が狂ってるだけで、本当は安いのかな。

高いだけあって、$19のスーツとは質が全然違う!
例えばえーと・・・、質感が滑らかだ!なんと穴が開いていない!


大事に使おうと思う。


今日は朝の3時に起きた。
俺の集合時間はなんと朝の7時。

・・・やらなきゃイカン事が山積みだ。

とりあえず速達便で送られて来た台本にざっと目を通し、
そのテレビシリーズの過去のエピソードを何話か観ておいた。

俺はただでさえ身体がデカいので、
主役級を食わないよう、気をつけながら仕事をこなそうと思う。


ああ、久しぶりだ。なんだか燃えて来た!

投稿者 ユウキ : 04:38 | コメント (2)

2006年10月25日  テレビ

げうかう

先日オーディションを受けた
某人気テレビシリーズにセリフ付きで出演する事になった。

チョイ役だけど一応喋るので、「ゲスト・スター」扱いになる。

撮影は明日、26日。

・・・流石はテレビ。
噂には聞いていたが、キャスティングから撮影までが早い。


テレビシリーズに出演するのはこれが初めてだ。
恥をかかないよう、全力を尽くして来ようと思う。

投稿者 ユウキ : 11:21 | コメント (5)

2006年02月12日  テレビ

早足インプット

明日の12時半に別の「とあるテレビシリーズ」のオーディションが入った。

渡された台本は42ページ。
それを読んだ上で10ページ分を演じなければいけない。


・・・間に合うだろうか?


間に合わせるしかない!気合を入れて覚えるぞ

投稿者 ユウキ : 20:30 | トラックバック

2006年01月31日  オーディション

心中オリンピック

「とあるテレビシリーズ」のオーディションの2次選考は
ユニバーサルスタジオ内のキャスティングオフィスで行われた。

オーディション室内には6人居た。

・ キャスティングディレクター
・ 俺の相手役
・ プロデューサー兼ライター
・ 偉い人
・ カメラマン
・ アシスタント

だけど俺はかなり落ち着いていた。

セリフは完璧。
エージェントの所でリハーサルをして動きにも自信がついた。

やれる事をやるだけだ。


自分の名前を言って相手役の人とシーンを始めた。

俺のコメディータッチの演技を観て、彼等からは笑い声が漏れた。


オーディション室を出る時、俺の心は清々しかった。

全く悔いの残らないオーディション。
結果を待っていても仕方がないので次へ進もう!

投稿者 ユウキ : 14:01 | トラックバック

2006年01月30日  テレビ

嵐の中で凪ぐ心

「とあるテレビシリーズ」のセリフ覚えは順調だ。

いよいよ今日が2次選考なので、朝の5時から起きて最終チェックをしている。

うちのエージェンシーも
テレビシリーズのレギュラーの2次選考とだけあって気合が入ってるようで、
午後2時半の2次選考の前に
エージェンシーに寄ってリハーサルを行う事になった。

一方俺の方はと言うと・・・事の重大さの実感が感じられない。

もしこの役を取れば名実共に「ハリウッドスター」の仲間入りする
絶好のチャンスなはずなのに、特に心が躍らない。


・・・実際に役を取るまでは所詮「絵に描いた餅」。食べられない。

今の俺に出来る事は、自分の最高の演技をする事だけ。
そこに「スターになろう」という感情は邪魔なだけだ。


さぁ、本番まであと9時間。

自分のセリフを最低でも100回は読み直すとしよう。


■テレビ・映画用

投稿者 ユウキ : 05:15 | コメント (2) | トラックバック

2006年01月28日  テレビ

氷の海で平泳ぎ

とある新作テレビシリーズ(ドラマ)の
主役級の2次選考に行く事になった。

テレビシリーズは情報規制が厳しい事で有名なので
まだ詳細を明らかにする事は出来ないんだけど、
もしもこれを取ったら・・・それはもう大変な事だ。


2次選考は月曜日。

俺に与えられた時間は2日。

その2日間で読まなければいけない台本62ページ。
覚えなくてはならないセリフも盛りだくさんだ。


うちのエージェントに恥をかかせないよう、
ベストを尽くしたいと思う。

投稿者 ユウキ : 10:11 | トラックバック