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2011年08月08日  舞台劇『ブリッジ』

アジフライ

舞台劇「BRIDGE」、公演8日目

・・・今日も、開演前に大きなゴタゴタがあった。

全ては、ステージマネージャーの
アレックスの電話から始まった。


「ユウキ・・・、もしかしたら、
 例の入場料を募金に回すのが
 できなくなるかもしれない。

 ・・・詳細は後で話すよ。」


一体何が起こったんだ・・・?

心配しながら劇場に着くと、
最悪の事態が俺を待っていた。


++++


今回の劇場は、震災募金集めに、
総力をあげて協力してくれていた。

雇われステージマネージャーの「アレックス」を陣頭に、
劇場スタッフの「ジョナサン」、そして演劇プロデューサーの
「アニー」の3人が協力体制を敷き、

 「ユウキを観に来た人は、全員タダで入場させ、
  その代わりに、いくらか募金して貰う。」

という方針を、これまでずっとサポートしてくれていたのだ。


でも一つだけ、心配事があった。


・・・劇場のオーナーの許可を取っていなかったんだ。


経営者のオーナーにそんな事聞いたって、
駄目って言う決まってる。

そこで、「アレックス」、「ジョナサン」、「アニー」の3人は、
日本の被災地に少しでも多くの募金を届けるため、
体を張って、秘密裏に今回の募金集めに協力してくれていたんだ。


 ・・・しかし、それゆえに事件は起こった。


今日は、月曜日という事で、先週と同じく、
代役の「ザマラ」が出演する事になっていた。

おそらく今日が、彼女にとっての出演最終日なので、
「ザマラ」は親戚12人を、今日の舞台に招待した。

親戚一同は車で5時間かけ、はるばるハリウッドまで
「ザマラ」の晴れ舞台を観にやって来たのだ。

・・・そしてザマラは、
そんな親戚一同が皆タダで入れるよう、劇場に電話をした。


ザ 「12人、お願いします。」

劇 「・・・え?どういう事?」

ザ 「ですから、タダ券を12人分お願いします。」

劇 「いや、タダ券は一人2枚のハズだけど。」

ザ 「でも私、これまでずっと毎日、
    代役として公演に来ていたけど、
    タダ券使ってないから・・・。」

劇 「タダ券は、一人につき一日2枚で、
    積み上がらないんだよ。」

ザ 「そんな・・・!!!
    車で5時間かけて来るのに!!!」

劇 「そうは言われても・・・。」

ザ 「じゃあ、ユウキはどうなの!?
    ユウキは何人でも招待できるじゃん!!」

劇 「それは、募金を効率的に集めるために、
    そういう約束をしたからだよ。
    タダで入場させれば、浮いたお金が募金に行くだろ?

    でもユウキとの約束は、今に始まったわけじゃなくて、
    一番最初から決めていた事だよ。

    そもそもユウキは、募金集めが条件で出演しているんだから。」


ザ 「もういいわ!他を当たってみる。」


自分の親戚のために必死になるあまり
頭に血が昇ったザマラは、
ここで、劇場のオーナーに電話をしてしまった・・・


ザ 「ユウキは、募金集めのために何人でも
    タダで入場させられるのに、
    私は親戚も入れられないのは、不公平だわ!
    タダ券を12枚、お願いします!!」


オ 「?????」


当然、劇場のオーナーはザマラが何を言っているのか
さっぱり分からない。

募金を促すためにタダで入場させるって話は、
オーナーは全く知らされていなかったのだから・・・。


オーナーは、演劇プロデューサーの「アニー」に電話をして
詳しい事情を聞いた。

・・・なるほどね。そんな事が起こっていたとは。


意外な事に、オーナーは募金には
一定の理解を示してくれたそうだ。

ただし、「12枚のタダ券」は絶対にダメだと念を押した。


・・・でもザマラは引かない。

$15のチケットが12枚で、$180だ。
そう簡単には引き下がれない。


ザ 「私は、これまでずーーーっと代役として毎日待機してきた。
    みんなのメイクも手伝って来た。
    だから、そんなに多くを求めてるとは思わない。、
    自分の最終公演に家族ぐらい入れてくれてもいいじゃない!
    私にも、少しぐらい融通きかせてくれてもいいじゃない!!」


もし俺達がオーナーだったら、
喜んでザマラの親族を入れてあげただろう。

・・・でも、ここの劇場のオーナーは、そう簡単には例外を認めない人なのだ。
だからそもそも、オーナーには秘密だったんだけど・・・


ザマラがあまりにも激しく要求するものだから、
ここでとうとう、オーナーの堪忍袋の尾が切れてしまった。


オーナー 「これ以降、全員、特別扱い、一切無し!!

        全員のタダ券も、今後一切無し!! 以上!!」


そして・・・、今に至っているワケだ。


ザマラは控え室で泣きじゃくっている。
とてもじゃないが、公演前だとは思えない雰囲気の悪さだ。

ステージマネージャーのアレックスは、
ザマラに秘密をバラされるも、
彼女の状況にも理解を示し、
劇場関係者のジョナサンと協力して、
12枚で$60という破格の値段を提示した。

そしてそれを、俺と主演のジェリーが
ザマラのために、二人で肩代わりして出す事にした。

これでとりあえず、ザマラの家族はタダで入れる。
ザマラはようやく落ち着きを取り戻した。


・・・あと問題は、募金の方か。

これまでは、オーナーにバレていなかったから
大丈夫だったけど、オーナーが「一切無し!!」
と宣言してしまったから、どうしようも無い。

・・・さすがに、
 「劇場に$15支払って、募金しに来て下さい!」
とは言えないぞ。


俺が今回の舞台に参加した一番の目的は
募金集めだったので困り果てていると・・・

アレックスとジョナサンがやってきた。


「・・・ユウキ、今から言う事は、
 他のキャストには、絶対に秘密だ。

 とりあえず、今週の水曜日までは、
 どうにかしてタダで入れる。

 大丈夫。俺達に任せてくれ。

 気兼ねせず、何人でも呼んで欲しい。
 少しでも募金が余分に集まれば、
 俺達はそれでいいんだ。

 ・・・でも、来週の約束は、残念ながらできない。

 一応頑張ってみるけど・・・、どうなるか分からない。

 だから、とにかく今週の水曜日までに、
 できるだけ多くの人を呼んで欲しい。

 ・・・もちろん、他のキャストには、絶対に内緒だよ。」


かぁーーーー!!!そこまでするか!!!!!

この二人には、どれだけ感謝しても、感謝しきれない。
日本のために、どうしてそこまでしてくれるのか。

俺は、この二人の好意を無駄にしないよう、
明日と明後日の二日間、全力で人を集めよう。

・・・他のキャストにバレないように。


++++


あ そういえば 今日もこの後で公演でした 


 ぼくは  とても  がんばりました

 ほんとうに  とても  がんばりましたよ

 じょうだん  じゃ  ないよ!

 ざまら も がんばりました

 ざまら は うれしい

 ぼく も うれしい


・・・さあ、明日も頑張ろう!!

アレックスとジョナサン、そしてアニーの好意を無駄にしないよう、
明日(火)と明後日(水)、是非劇場までお越しください!!

そして入口で、

 「Yuki Matsuzakiの知り合いです。入場料を募金したいです。」

と言ってタダで入場し、入場料を募金箱に入れて下さいな!!!!


・・・舞台って、毎日毎日問題が起こってにぎやかね~


<募金額>
■今日:$141.77
■合計:$957.32

投稿者 ユウキ : 23:35 | コメント (4)

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