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2005年06月30日  映画一般

素晴らしき日

映画"Ask the Dust"のオーディションはパラマウントスタジオの
クロスビーADRスタジオで行われた。

ADRというのはAutomatic Dialog Replacementの略で、
日本語で言う「アフレコ(声あて)」と思って問題無い。


オーディションに参加していたのは、
青年役に7人、少年役も7人。

俺は青年役だ。


まずロバート・タウン(Robert Towne)監督が簡単にシーンの説明をし、
それからオーディションで使うシーンを皆で何度か観た。

シーンはコーリン・ファリル(Colin Farrell)演じる主人公が、
海岸でフットボール(ラグビー)に興じる日本人少年達に混じって遊んでいるシーンだった。

俺達は今からこのシーンに合った声を出さないといけないわけだ。


まず選ばれたのは俺こと「ユウキ」と、同じく「ユウキ」という名の少年だった。
ダブル「ユウキ」だ。

だが、少年ユウキは緊張のあまり固まってしまい声が出ない。
困ったスタッフは少年ユウキの代わりに
別の日本人男性を使ってオーディションをスタートする事にした。

そこで選ばれた俺ともう一人の日本人とは・・・

   「ユタカ」だ。

彼は俺がラストサムライのオーディションに行った時もパートナーだった。
あの時は一緒にチャンバラをした。そして2人共キャストされた。抜群の相性だ。


俺達2人はスクリーンを見つめながらシーンに合った声を出していった。
スタッフが「大きな声が欲しい」と言っていたので、2人で元気良く思い切りやった。


・・・終わった。


するとタウン監督がミキサー室からマイクを使いわざわざコメントを出してくれた。

 「君達2人共素晴らしかったよ!」


その後、他の俳優達も2人づつペアになってアフレコをしたわけだけど、
ここで恐ろしい事実が明らかになった。

子役用に来ている7人全てが日本語を話せない!

なんてこった。
日本語の声のオーディションなのに日本語が話せないなんて。
ちなみに青年役は7人中5人が日本人だ。

スタッフにも日本人は居ないので、
俺が付きっきりで子役の傍に付き、セリフを耳に囁く事になった。

だけど・・・、これは厳しい。

俺 「こっちこっち!」
子役「コチコチー!」
俺 「ちょうだい!ちょうだい!」
子役「チョダーイチョダーイ!」
俺 「待って待って!」
子役「マテマテー!」
俺 「はやく!」
子役「ハヤクー!」

ううむ・・・


オーディションが終わった。

スタッフはミキサー室の中で話し合い、そして結果を伝えた。

「皆さんお疲れ様です。今から結果を伝えますが、
 結果に関わらず、皆さん素晴らしかったです。
 残って頂きたいのは・・・、

 ユウキマツザキ・・・・、
 ユタカタケウチ・・・、
 そして子役は・・・、」


おおおおおおおおおおお!!!
取ったっっ!!!

すげえ!取った!・・・しかもユタカも取った!


俺達の声の大きさが高く評価されたようだ。


さあ、本番へ移ろう!


本番と言っても、やる事はオーディションと全く同じだ。
映像を観て、それに見合った声を出す。

俺と子役のうちの一人、ユタカともう一人がペアになった。


まずは子役に日本語を教える事から始める。

俺 「にいちゃん!こっち!」
子役「ニチャーン!コチー!」
俺 「にいちゃん!こっち!」
子役「ニーチャーン!コッチー!」
俺 「にいちゃん!こっち!」
子役「にーちゃン!こっチ!」
俺 「そうそう!」

ユタカももう一方の子役に日本語を教えている。


本番では・・・俺達のペアは何と1テイクでOKが出た。
ユタカのペアは子役が「ちょだーイ!」しか言ってなかったので
8テイク掛かった。

結局スタッフも諦め、子供はアメリカ人という設定に変えて
いくつかのセリフを英語で録った。


できあがった物を聞いて、俺はいくつか気になった。
今、日本語で「ボール」という単語が聞こえたような・・・。
(設定は1933年)

指摘したけど、
「少しの英語は大丈夫。一応舞台はカリフォルニアという設定だから。」
との事。

こういう時、スタッフに日本人が居ればな、と切実に思う。


多分俺の声は他と混じってるので聞いても殆ど分からないだろう。
もしも高い青年の声が聞こえたら、それが俺の声だ。低い方がユタカ。


帰り際、映画「War of the Worlds(宇宙戦争)」の上映開始を記念し
パラマウントスタジオ内で大バーベキュー大会が催されていたので
俺も少し立ち寄って美味しいバーベキューをご馳走になった。


・・・良い1日だった。明日も頑張ろう!

投稿者 ユウキ : 22:18 | コメント (3) | トラックバック

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