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2011年10月23日  舞台劇『ブリッジ』

羊の反乱

午後2時から予備劇場で
舞台劇「ブリッジ」の立ち稽古。

俺が劇場に着くと、第三幕に登場する
女装男役の「ドナルド」と、主人公の「スタン」とが
舞台上でリハーサルを行っていた。


・・・しかし、どこか雰囲気がおかしい。


何やら言い争いが起こっているようだ。



ドナル「・・・もう私、ガマンできません!

    前回のリハーサルで、4時間かけて、
    それぞれのシーンの『立ち位置』を決めましたよね。
    スタンは、どうしてそれを無視するんですか?

    そしてケリー(監督)は、
    どうしてそれを、とがめないんですか?」


スタン「仕方がないだろう?
    その瞬間の感情が、違う動きを要求してたんだから。」


ケリー「そうよ。感情優先よ。
     それに、まだリハーサル中なんだから。」


ドナル「・・・じゃあ、どうして私の場合は駄目なんですか?

    私が、決められた『立ち位置』を無視したら、
    ケリーは絶対に、そこでシーンを止めて、
    やり直すじゃないですか。

    スタンは良くて、私は駄目って、どういう事なんですか!

    ・・・大体、前回のリハーサルで『立ち位置』は
    もう完全に確定したんじゃなかったんですか?

    私は、立ち位置が変わる度に、
    『ああ、また変わった』という余計な思考が入って来るので、
    すごくやり辛いんです。役に集中できない!

    無視するんだったら、どうして前回、
    わざわざ4時間もかけて決めたんですか!」


ケリー「私は、その瞬間の感情がリアルであれば、
     どんな動きをしても、シーンを止めないわ。

     いい?感情は、腹から来るのよ!
     頭からじゃないの!!」


ドナル「・・・ケリー、
     あなたは私を一人前の俳優として
     見ていないのでは・・・?

     私の『演技力』を、私の『演技法』を、
     全く信頼していないのでは・・・?

     だから、スタンと私の扱いが
     こんなにも違うのでは・・・?


     ・・・あなたが、私をまるで『生徒』のように
     扱っているのには、薄々気付いていました。

     毎日のように、『演技法の宿題』は出されるわ、
     舞台上で、『演技』指導ではなくて、
     『演技法』を指導されるわ・・・、


     ・・・私とあなたとの演技法は、違うんです!
     あなたの演技法を、私に押し付けないで!

     私は、私のトレーニングを受けて、
     一人前の俳優として、今ここにいるんです。
     だから、私の演技法にも、敬意を払って下さい!

     大体、私の演技法が気に食わないのなら、
     どうしてオーディションしてまで、
     私をキャストしたんですか!

     自分の好きな演技法の俳優を
     キャストすれば良かったじゃないですか!!」


ケリー「私は、みんなに敬意を払っているわ!

     ただ、もう時間が無いの!!
     配慮している余裕が無いの!」


・・・。


 ・・・やはり、こうなったか。


「女装男」役のドナルドは、
今回の舞台ではキャストのうちの一人だけど、
実は、監督であり、プロデューサーでもあるのだ。

だから、彼は舞台全体を「流れ」として捉え、
全体としてのメッセージ性を重視し、
その「流れ」の中での自分の「役割」を
果たすために演技する。

リハーサルを円滑に進めるために、
決められた「立ち位置」は、もちろんちゃんと守る。

言ってみれば、本来あるべき姿、優等生だ。


・・・ただ、ケリーはそうじゃない。


そもそも、彼女は「監督」ではなくて「俳優」なのだ。

しかも、例の「アクターズ・スタジオ」が採用している、
「センサリー・メモリー法」という演技法を
教えている、演技の先生でもあるのだ。

だからケリーは、舞台全体を「流れ」として見ないで、
その瞬間、その瞬間に、
「センサリー・メモリー法」で演技できているか、
という事に、特にこだわっている。

当然、ストーリーにおけるそれぞれの「役割」という
意識も殆ど無いため、
作品として何が言いたいのかという「メッセージ」は、
未だに誰も知らない。わからない。(ケリー自身も)


・・・ただ、まあ、
鑑賞したら、心に傷を負うほどのパワーを持った、
荒削りで、尖った作品になる可能性を秘めているもの事実だ。


とにかく、ドナルドとケリーは、水と油なのだ。


ドナルドには、作品としてのメッセージを軽視し、
「センサリー・メモリー法」に固執するケリーが全く理解できない。

通常あり得ない話だけど、ケリーはリハーサルの度に
「センサリー・メモリー法の宿題プリント」を
を俳優に提出させていたので、

 「これじゃまるで演技学校の生徒だ!」

とドナルドがブチ切れるのも頷ける。


ケリーも、ドナルドの「作品中の役割を演ずる」
優等生の演技法が気に食わない。

彼女は、「役割」なんて完全に無視して、
キャラクターとしてリアルになって
舞台上で生きて欲しいだけなのだ。


・・・ううむ、確かに、
なんでドナルドをキャストしたんだ、
と思わず突っ込みたくなる。


さーーー、今回の舞台も、波乱万丈です!


はっはっは。
面白いですねー!舞台のリハーサルって!!!

本番まで、あと19日!

投稿者 ユウキ : 2011年10月23日 23:36

コメント

私にとっては、ドラマや映画の世界です(゜゜;
やはり、自分のやり方でもめたりすることがあるんですね。
プロだな、、、と思いました。
頑張ってください!

↑投稿者 kana : 2011年10月26日 23:22

これは文章だけで全部解釈するのは難しいですねー。でも、宿題プリントっていうのは首を傾げますね。

でも、何かあった時は、ユウキさんは両方の良い所を汲み取ってアドバイスしてあげてください。(お節介でした、すみません。)

↑投稿者 hiro : 2011年10月27日 07:14

いい舞台を作りたい思いは、一緒なんだろうけどね💦
でも、確かに気持ちは分かります
よーし!一回、ケリーかドナルドのどっちかと飲みに行こう🍻🍸✨

↑投稿者 Yumi Depp : 2011年10月28日 03:56

私もアクターズスタジオの「演技法」に強いこだわりを持つ人に2度ほどやっつけられた経験があるので
ドナルドの気持ちがよくわかります。
立ち位置ぐらいはまぁ変わってもいいとは思うのですが

しかも今回とてもタイムリーなのでなんだかとても共感しました。

ある人に有効な「演技法」が万人に有効とは限らないと思うのでやっぱり押し付けないで欲しいなって思います。

いつも楽しみに読ませていただいています。
今度の舞台もがんばってください

↑投稿者 YUKI : 2011年10月31日 00:00

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