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2008年02月13日  映画一般

空に星は見えない。

AFI(アメリカ映画協会:American Film Institute)という団体が撮影する、
8th Samurai(八人目の侍)という短編映画に、
照明助手の「山下」として出演する事になった。

http://www.the8thsamuraimovie.com/

「硫黄島」で共演した俳優仲間が多数出演する事もあって、
このプロジェクトの事は聞いていた。

でも昨日、キャスティングディレクターの方から連絡があり、
「照明助手その1」の役を演じる人を探しているとの事だった。


「僕でよければ、お願いします」とメールしたところ、
監督から「是非ともお願いします。」と返ってきた。


そこで、マネージャーの「マイク」と相談した。


俺   「マイク、この映画のこの役を演じたいんだけど・・・」

マイク「・・・え、でも、ユウキ、この役は役名が無いよ。」

俺   「知ってる。」

マイク「・・・セリフも、この2つしか無いんじゃない?」

俺   「知ってる。」


マイク「・・・・・・大丈夫かな。
     それって、君のキャリアにとって、マイナスになるんじゃないか?」


俺   「・・・・・マイク、もう一度確認するけど、
     俺は「スター」を目指してるんじゃなくて、
     「俳優」を目指してるんだ。
     自分がスターになる事には全く興味が無い。

     君も良く知ってる通り、俺達日本人の役は、ほとんど無い。
     そのほとんど無い日本人の役を、大勢のアジア人で奪い合ってる。
     セリフが英語だったら、
     プロダクションは日本人を使う事にこだわらないから、
     「アジア人俳優全て」が競争相手になる。
     セリフが日本語だったら、
     興行的に考えて日本から俳優を連れて来るから、
     「日本のスター」が競争相手になる。

     ・・・俺はまだ、俳優として経験不足だよ。
     現時点でこの競争に勝てるとは、到底思えない。

     今は、とにかく一つでも多くの現場を経験したいんだ。
     俳優としては、きっとプラスになるはずだよ。」

マイク「・・・でもね、ユウキ、IMDb(ネット上の俳優データベース)を、
     キャスティングディレクターが見たら、どう思うかな。
     せっかく硫黄島、ピンクパンサーと、役名のある主役級の役を
     演じてきたじゃないか。
     でも、その次が「照明助手1」じゃ・・・、」

俺   「分かってる。俺をオーディションに送るのが、
     やり難くなるって言いたいんだろ?キャスティングにナメられるから。」

マイク「・・・うん、まあね。」

俺   「大丈夫。心配いらない。
     これが20、30個と積みあがれば、
     その、こなした役の数自体が、
     もっと大きな力になるはずだよ。
     俺も演技が磨けて一石二鳥じゃないか。
 
     ・・・それに、映画のスチール写真がある。

     もしも、キャスティングディレクターが
     何らかの映画で俺の顔を覚えていれば、
     その映画以外で俺が何をしてようが、
     向こうは気にしなくなるんじゃないか。」

マイク「・・・かもしれないね。」

俺   「・・・だから、いいよね。是非ともやりたいんだ。」

マイク「じゃあさ、これはどうかな。
     ちょっと、監督に連絡させてよ。
     照明助手1に役名を付けれないか聞いてみるよ。・・・それはいいよね?」

俺   「もちろん。ありがとう、マイク。」

マイク「こちらこそ、ありがとう。共に前に進んで行こう。」


・・・こうして、照明助手の「山下」を演じる事になった。

「ハリウッドスター」ではなく、
「ハリウッド俳優」を目指す俺にとって、マイナスになる事など何も無い。
もしも演技に失敗したら、それこそが最大のプラスになるんだ。
失敗する事で自分の「弱点」を見つける事ができるのだから。

撮影までもう1週間も無いけど、死ぬ気で1953年の照明技師になろうと思う。

投稿者 ユウキ : 2008年02月13日 23:35

コメント

ユウキさんの考え方や姿勢がとても好きです(^-^)!
日本から応援することしかできないけど頑張ってください!

↑投稿者 れい : 2008年02月14日 04:31

いつもブログを楽しく拝見しています。

アメリカに10年間学生として、日本でその後10年間社会人として働き、理由があってまたアメリカに移住してきたものです。

日々「日本だったらすぐにでもうまくいくのに。」と考えさせられること多々あり凹みまくっていますが、ユウキさんのBlogを読んでは、日本人であるというところにこだわって生きていてはなかなか先が思いやられるなあ、と反省しています。特に、「日本人用のお仕事 in America」という小さいパイを日本人みんなで取り合っている、というくだりに強く共感しています。本当に欲しいのはそこじゃないんだよね、と。

いろんな意味で競争原理がMaxに働いているこの国で、胸をはって生きるにはそれなりの努力と自分から壁を壊していく勇気が必要ですね。

同じ日本人として、またその壁を越えようとしている同士(と勝手に決めつけて)として応援しています!がんばってください。

↑投稿者 atika : 2008年02月14日 17:56

ユウキさんの判断が正しい。

役の大きさがキャリアに影響を与えることはないですよ。
役名のあるなしじゃなくて、問題は「質」です。
目的のしっかりした真面目なプロジェクトなら、進んで参加するべきです。

どこで、どんな人に偶然見てもらえるかわからない。
どこで、どんなコネクションができるかわからない。

マイクさんには失礼ですが、マネージャーとして大丈夫かな。

ベストを尽くしてください。

↑投稿者 eda : 2008年02月15日 02:17

お久しぶりです。
すげぇな、相変わらず。

お互いに、何者かになろうよ。。

↑投稿者 YO-すけ : 2008年02月15日 10:07

>れいさん、
どーも、こんにちわ!
これからも、全力で頑張りたいと思います。

>atikaさん、
どーも、こんにちわ!
僕は、「運が悪かった」という考え方は危険だと思っています。
自分がオーディションに受からなかったのは、
れっきとした理由があったからで、
それを「運が悪かった」で片付けてしまっては、
成長を拒否しているのと同じになってしまうからです。
敗因を冷静に分析し、
それを一つずつ潰す事こそが、成長のカギだと思っています。

>edaさん、
いや、マイクの考え方は、
マネージャーとして確実に正しいのです。
実際問題として、
「照明1」がIMDbの一番上に来ると、
大きな役のオーディションに呼ばれ難くなる可能性があります。
一瞬の見た目でキャスティングが、
僕を「チョイ役要員」と見なす事が、本当にあり得るからです。

大作映画の主役級のオーディションをする際、
キャスティングは確実にIMDbをチェックします。
そこで、その役者が過去にどんな作品に出ているかをチェックするわけです。
でも、エキストラの人で、本当はキャストでなかった人も
「店の客」、「ダンサー」、「会社員」などの役名を使い、
自分のキャリアを多く見せる事が出来るシステムになっていますから、
その「会社員」と「照明1」が同じに見られてしまうわけです。

するとキャスティングは「大した事ないな」と印象で
思ってしまい、結果的に主役級のオーディションを逃します。

マイクが心配していたのは、これです。

僕は、確かにその点の注意が抜けてました。
「照明1」と「山下」は、彼の言う通り、大きく違うのです。

ハリウッドでは、ほぼ全ての役でオーディションがありますが、
誰でも全てのオーディションに行けるわけではなく、
多くの場合、自分のキャリアに沿った役のオーディションに呼ばれます。
上を目指したければ、少しずつ「階段」を上り、
自分の演技力を証明しなければならないわけです。

僕は、演技力を鍛え、英語力を鍛え、
その階段を一歩ずつ踏みしめながら登ろうと思っています。

>よーすけ、
久しぶり!
おお、舞台やってんだね!
いいねー、
お互いにガンガン頑張ろうね。

↑投稿者 ユウキ : 2008年03月12日 06:54